歯原性腫瘍は、その多様性と個々の機関が有する症例数の少なさから大規模で体系的な解析が不十分である。また、歯原性腫瘍には地理病理学的な特性があるが、アジアにおける大規模な調査研究はこれまでない。本研究ではアジアにおける歯原性腫瘍の症例を収集することによって、アジアにおける歯原性腫瘍の実態を明らかにし、WHOによる歯原性腫瘍分類の改訂に向けてアジアの症例をベースとした提言をすることを目的に、平成26-28年度にかけて13か国22機関(日本8機関を含む)における歯原性腫瘍の大規模調査を行った。その結果、歯原性腫瘍5600例(良性腫瘍5504例; 98.3%、悪性腫瘍96例; 1.7%)を渉猟することができた。発生頻度は、エナメル上皮腫(2232例; 39.9%)角化嚢胞性歯原性腫瘍(2083例; 37.2%)、歯牙腫(638例; 11.4%)の順であった。なお、訪問した機関は、いずれも各国を代表する教育研機関であるが、病理診断を取り巻く環境や診断レベルは多様であり、病理診断の均てん化が重要な課題であることが確認された。一方、国内連携研究者の機関から歯原性腫瘍6557例を渉猟することができた。良性腫瘍は6496例; 99.1%、悪性腫瘍は61例; 0.9%であった。発生頻度は、角化嚢胞性歯原性腫瘍(2545例; 38.3%)、エナメル上皮腫(1737例; 26.5%)、歯牙腫(1642例; 25.0%)の順であった。日本では歯牙腫の発生頻度が高いことが明らかとなった。今後、本研究で収集された症例を診断困難症例や希少症例を中心に詳細に解析し、歯原性腫瘍にかかる問題点をさらに明らかにする必要がある。本研究の成果を背景に、高田(研究代表者)が歯原性腫瘍のWHO国際分類改訂にvolume editorの一人として参画し、臨床的視点や国際的普遍性の視点から腫瘍型の整理を提案することができた。
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