今後の研究の推進方策 |
日本で平成26~27年度中に収集した菌株については,MRSAの遺伝子型別に使用される必須遺伝子7種類のDNA塩基配列を決定し,分担研究者らがこれまでに実施してきた遺伝子系統分類の通法に従い型別を行う(Iwase, Uehara et al, Nature 2010等).さらに,別の分担研究者は,MRSAが外来性の抗生物質耐性遺伝子を取り込む際に,頻回にその組換えポイントとなるIS配列やattP/attBモチーフ配列を調べ,外来遺伝子の取り込み易さのタイピングを試みる.その他の海外エリア担当スタッフは,前年度の海外調査先の各種事務手続きの承認を得しだい,MRSA抗生物質耐性データと細菌株を新潟大学へ送付する.計画の進捗に伴い(Domon H, Uehara Y, Oda M, Seo H, Kubota N, Terao Y: Poor survival of Methicillin-resistant Staphylococcus aureus on inanimate objects in the public spaces. MicrobiologyOpen 5: 39-46, 2016),新たに浮上した仮設がある.すなわち,一人の患者から採取し続ける経時的なMRSAサンプルは,必ずしも同じクローンでは無く,感染が完治しMRSAが完全排除されると,別クローンのMRSAが新たに感染するという可能性である.当初の申請計画が順調に進捗した場合は,単一患者から複数箇所の菌株スワブを行い,複数菌株をトレースすることで,MRSAクローンの排除と新規感染について経時的な解析も試みたいと考えている.
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