研究課題/領域番号 |
26310101
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
|
研究分担者 |
森山 葉子 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10642457)
山岡 祐衣 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20726351)
本澤 巳代子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70200342)
高橋 秀人 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80261808)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
|
キーワード | 社会医学 / 医療・福祉 / 臨床、老化 / 文化人類学 / 緩和ケア |
研究実績の概要 |
まず、本年度は、国内および諸外国における情報収集を実施した。海外の研究者と意見交換をする機会を設けることができた(学会発表参照)。それらの過程で、世界の状況についてはInternational Primary Palliative Care Network http://www.ippcn.org/ に、途上国など文化的背景も含めた情報としては、EthnoMedの中のCultural Relevance in End of Life Care https://ethnomed.org/clinical/end-of-life が有用であることがわかった。 次に、我が国における状況把握としては、まず、後見人の状況について、共同で実施したつくば市のニーズ調査に組み込むことができ、基礎的分析を実施した。また、すでに基礎分析が整っていた 1)全国介護保険レセプト(以下、全国レセプト)および、2 )全国老人保健施設協会 (以下 、老健協会)による全国調査(全国からランダムサンプリングされた949施設およびH23の年間死亡者全員(4294人)における調査)の両データから、本研究に合致した基礎的分析が可能であることを改めて確認した。1)の全国レセプトでは、経管栄養加算の算定状況により、全国の介護保険3施設での経管栄養から経口に移行した数が把握できた。経口移行の可能性が予想外の大きく、経管栄養のマイナス面が強調される傾向の中、意義が大きい。また、2 )の老健データでは、老健で死亡した事例について、遺族の満足度との関連要因を調べたところ、入所時から看取りの説明をしていること、臨終に家族が立ち会えたことが高い満足度と関係していることが明らかになった。次年度は、これらの基礎的結果をもとに、レビューした内容とあわせ論文化を推進し、不足部分を調査実施等で補う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定した研究雇用者の雇用ができず、レビュー等が当初の計画より遅れをとったが、一方では、二次データ分析による可能性を確認できたことは、次年度の展開に向けて重要であった。これらの論文化を進めつつ、新規の調査を補完的に進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施した国内および諸外国における情報収集をもとに、引き続き、全国レセプトについては、必要に応じてデータ利用追加申請を行い、分析を続け論文化を進める。さらに、老健データからは経管栄養以外の他の医療処置も含めた実施と、その後の死亡までの経過や予後の把握が可能であり、これらをマルチレベル分析や操作変数を用いた分析を行い、ヘルスサービスリサーチの研究手法で分析する。意思決定困難事例の実態把握については、平成26年度に得たつくば市調査における後見人についての分析結果をもとに、司法書士への成年後見人としての医療判断に関する調査を実施する予定である。看取りの担い手の実態を課題としては、初年度で得ることができた老人保健施設およびグループホームにおける職員を対象とした看取りへのプロセスに対する問題点と課題把握を引き続き行う予定である。また、救急医療学会関連3学会からの終末期ガイドライン案が医療処置の中止を含めて明記し提示され、救急医療における決定についての議論が不可欠になった。このため、本年度より、救急医でありヘルスサービスリサーチの専門家でもある阿部智一氏を分担研究者に招き、救急やガイドラインの視点も加味した調査結果の解釈、分析を共同実施することとした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、人件費に予算を大幅に取っていたが、雇用予定であった当該分野に詳しい適任者が海外赴任となり、予定通りの雇用が出来なかった。その分、今年度は研究に有用な研究資料の購入および、分析に必要な消耗品に使用したため、交付申請時の金額と大幅に違う支出となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は、適任者雇用の目処がたち、昨年度の期間内に、情報収集の人的ネットワークが初年度で拡充してきたことから、昨年度の遅れを取り戻すべく、繰り越した分を人件費として最大限に活用して、研究を推進する予定である。調査については、二次データの活用で充分な研究成果を得られる見込みが立ち、調査実施の経費は予定より少なくて可能と考えられ、人件費中心の経費となっている。
|