研究実績の概要 |
超高齢社会における多様な高齢者像の視点に立った「ネオ・ジェロントロジー」における問題点である「加齢の個人差の物差し」として、「遺伝子年齢」を一つの尺度として用いることの意義を明らかにすることを最大の目的として、研究代表者の研究成果である世界初のテロメア自動測定機を用いて「末梢血リンパ球テロメア長」を測定し「遺伝子年齢」を算出した。加齢の個人差は、細胞レベルのストレスへの対応力にも差異が出ることから、益々増加するストレス社会が原因で起こる疾患のリスクを、染色体に対するストレスを評価することができる「末梢血リンパ球Gテール長」を用いて評価し、多様な高齢者像の相違と共に評価し疾患の予防方法となり得るかを検討した。その結果、同年齢の平均テロメア長から算出した遺伝子年齢の差は大きいことを見いだし、多様な高齢者像の相違を解析する上での「加齢の個人差」の尺度として有用性を明らかにした。さらに、その違いは、加齢疾患の罹患と関連していることを見いだした。さらに、テロメアGテール長は、テロメア長と比較してさらに加齢疾患の罹患率を予測できる可能性を見いだした(EBioMedicine 2(8): 960-967. 2015)。具体的には、テロメアGテールは、血管内皮機能が障害されている患者や広範囲な大脳白質病変を有する患者で顕著に短縮する。さらに、テロメアGテール長が心血管病、脳卒中、認知症などの病気の発症リスクを評価する新規バイオマーカーとなる可能性が高いことを明らかにした。慢性腎疾患CKDでの前向き研究で、Gテール長の短縮が、血管イベントのリスクファクターになることを見いだした(CJASN 9, 2117-2122 ,2014)。以上、テロメア長及び’テロメアGテール長の測定は、それぞれ遺伝子年齢および環境因子などに起因するストレスの尺度として有用であることを明らかに出来た。
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