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2014 年度 実績報告書

高齢犯罪者の自己像の認識と、かれらの再社会化への挑戦に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26310108
研究機関東洋大学

研究代表者

細井 洋子  東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (80073633)

研究分担者 平山 真理  白鴎大学, 法学部, 准教授 (20406234)
辰野 文理  国士舘大学, 法学部, 教授 (60285749)
古川 隆司  追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (60387925)
渡辺 芳  東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70459832)
宿谷 晃弘  東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80386531)
小柳 武  常磐大学, 国際被害者学研究所, 教授 (90576216)
研究期間 (年度) 2014-07-18 – 2019-03-31
キーワード高齢受刑者 / 再犯防止 / ライフスートリー / 自立支援 / 国際比較 / 国際研究者交流:NZ、US、台湾、韓国、
研究実績の概要

1)国内動向の把握:研究に関連する社会動向の資料、及び海外基礎データを収集整理。2)「聞き取り調査」の調査票作成:質問内容の検討は、平成26年5月より、日本研究者とNZのジョン・プラット研究者とで行われ、平成23年~25年度の科研費の研究として、両国で行った刑務所における「高齢受刑者アンケート調査」(日本N=653、NZ N=62)の結果を踏まえるものとし、26年、11月にジョン氏を加えた東洋大学で開いた研究会で質問項目を確定し、国際比較のために日本語・英語・中国語版の調査票を準備した。
3)国内の高齢元受刑者への「聞き取り調査」の実施: 26年12月に東京、27年2月の前橋で共に70歳男性の高齢元受刑者2名に対して調査を行い、彼らの犯罪行動、罪の意識、今後の人生観などの異なるタイプの実態を知ることができた。
4)海外の高齢元受刑者への「聞き取り調査」の実施:NZでは、プラット氏の大学での倫理委員会で審査が行われており、USでもサンフランシスコでの実施が可能となり、具体的な実施段階にある。また、豪州(2州)、台湾、韓国の研究者との協議が進んでいる。
5)受刑者への「自由記述調査」:受刑者との文通ネットを介し、受刑者の声を聞き出すことを意図した自由記述欄で構成された調査票を作成した。質問項目は、①犯罪・非行、家族、生活などの記憶や思いについて、②10代からの年代別の非行・犯罪と、家族・生活・仕事などの「生活世界」のプロセスを時系列に把握する項目、③今後の犯罪、家族、被害者、支援に対する意識や希望についてを記述するものとした。調査は、26年7月から300名に送付し、27年3月初旬までに半数の150名からの回答を得た。回答者は50歳以上が39人(26.0%)、60歳以上が13人(13.7%)と高齢者の構成は低いが、多様な人生の変化を時系列に知ることができた。詳細な分析は次年度で行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度での研究は以下の様に進められ、おおむね当初目標に到達しているが一部今後の課題として残された。
1)「国内動向の把握」では、国内の高齢犯罪者に関する文献や資料、統計の収集と海外の基礎的な統計などの整理は進んでいるが、高齢者や受刑者に対する「一般生活者」の意識の情報など、高齢犯罪の社会的な背景を分析する資料の整備が一部残された。また、国際比較のための海外の現地関連情報の収集活動も今後の課題となった。
2)高齢元受刑者への「聞き取り調査」の調査票は、NZの研究者と検討を重ね、調査項目は11月の日本とNZの研究者が出席した研究で決定した。また日本語版、英語版、中国語版を準備することができ、NZ以外の国での海外との折衝がスムーズになった。 3)国内の「聞き取り調査」は、12月に東京、27年2月に前橋の2回(2名)行うことができ、貴重な元受刑者の情報がえられた。今後、高齢元受刑者の調査対象者の設定数の拡大方法として「地域生活定着支援センター」など元受刑者の支援組織との協力関係の促進が課題となった。 4)海外の「聞き取り調査」は、NZ、USでの実施計画が順調に進み、27年4月以降実施段階に至った。また、豪州(2州)、台湾、韓国での折衝も進んでいる。しかし、本年度中に台湾か香港へ出張して具体的な実施計画の協議ができず、来年度で行うこととなった。
5)受刑者に対する「自由記述調査」は、刑務所の受刑者との文通ネットを介する郵送法調査として300名に調査票を送付し、半数の150名の受刑者の生の声を想定以上に得ることができた。特に、非行・犯罪と「生活世界」の関係を、10代から時系列データとして整理することができ、今後の分析により、多くの知見が得られることが期待できる。また、この調査手法により、容易に多数の受刑者の声を得ることができる調査は、今後の研究手段として貴重な役割を持つと考える。

今後の研究の推進方策

1)国内動向の把握:国内の研究に関連する社会動向の資料の収集と整理を継続的に行い、今後、基本的な「fact sheet」を作成し体系化された資料集とする。海外の資料も国別の研究担当者を配し現地資料の充実を図り国際比較資料として「fact sheet」に反映させる。
2)国内の「聞き取り調査」の実施:26年度に2名に調査を行ったが、調査対象者の設定の機会の拡大のために、これまでの元受刑者の支援組織に加え、「地域生活定着支援センター」や元受刑者の支援組織などとの交流を進めて行く。
3)海外の「聞き取り調査」:現在の実施計画を進めている6カ国別に担当者を明確にし、各国での計画の推進と各国の研究関連情報の収集を進める。すでに実施段階にあるNZとUSで調査を進める。豪州(2州)と台湾、韓国での実施に向けて情報交換を密にする他、状況に応じて海外出張をする。また、7月に細井洋子が、リスボンで開催される「E F R J:Summer School 2015」で日本のRJの実状を報告すると共に、各国の研究者に、高齢元受刑者への「聞き取り調査」や「受刑者アンケート調査」の共同実施の要請を行い国際比較調査の拡大の可能性を探る。
4)受刑者への「自由記述調査」:これまでに回収された150票やその後、回収された調査票に記述された言葉のコーディング作業を進め、本格的な分析を進める。まず、年代別の非行・犯罪と「生活世界」のプロセスを明確にし、高齢受刑者の軌跡を明らかにする。また、他の機関を通しての受刑者調査の可能性を探って行きたい。
5)年齢・加齢に対する意識調査(仮題):高齢者犯罪の要因や再犯防止などの社会的背景の把握を目的とした調査として、一般生活者を対象にしたWEB調査と4)の受刑者への「自由記述調査」の追加調査を計画して行く。一部共通質問を設定し、それぞれが描く高齢者像を明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

海外での共同調査の推進を目的とした出張として、台湾、または韓国を計画していたが、両国の研究者との調整が合わず、現在はEメールなどで情報交換を行い、次年度以降となった。

次年度使用額の使用計画

細井洋子(研究代表者)が、7月にポルトガルのリスボンで開催される「European Forum for Restorative Justice:Summer School 2015」に出席し、日本のRJの実状を報告すると共に、各国の研究者に、高齢元受刑者への「聞き取り調査」や「受刑者アンケート調査」の共同実施の要請を行うための出張経費として使用する。現在、台湾や韓国との共同調査の検討は継続されているが、進捗状況により出張を行うこととする。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 罪を犯した人たちと共に生きる : 「マザーハウス」の取り組み2015

    • 著者名/発表者名
      細井 洋子、五十嵐 弘志
    • 雑誌名

      NCCD

      巻: 123(50) ページ: 43-59

  • [雑誌論文] 「高齢受刑者の生活世界に関する調査」報告2014

    • 著者名/発表者名
      細井 洋子、小柳 武、古川 隆司
    • 雑誌名

      刑政

      巻: 125(12) ページ: 62-73

  • [雑誌論文] 司法と福祉の架け橋:社会復帰支援における連携と倫理的課題2014

    • 著者名/発表者名
      古川 隆司
    • 雑誌名

      罪と罰

      巻: 51(4) ページ: 92-104

  • [雑誌論文] 社会福祉・老年学からみた高齢者犯罪 (特集 高齢者犯罪対策) -- (社会安全フォーラム 高齢者犯罪の実態と対策)2014

    • 著者名/発表者名
      古川 隆司
    • 雑誌名

      警察學論集

      巻: 67-6 ページ: 18-32

  • [学会発表] 高齢者犯罪と社会復帰の条件に関する研究 (1)2014

    • 著者名/発表者名
      古川 隆司
    • 学会等名
      日本犯罪社会学会第 41 回大会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      2014-10-18

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公開日: 2016-06-01  

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