研究課題/領域番号 |
26310202
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70300887)
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研究分担者 |
上田 肇一 富山大学, その他の研究科, 准教授 (00378960)
手老 篤史 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60431326)
佐藤 勝彦 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90513622)
黒田 茂 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90431303)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 生体生命情報処理 / アルゴリズム / 単細胞生物 / 数理モデリング / 行動 / 繊毛虫 / 粘菌 / 反応拡散方程式 |
研究実績の概要 |
本研究では、単細胞レベルで実現される生命知のパフォーマンスを物質レベルの物理的な運動方程式により数理モデル化し、そこから高等動物に至る生命情報処理の共通則を探索する。単細胞生物には神経系という情報処理器官がないので、体の運動方程式を書き下せば、そこには情報処理のアルゴリズムが自ずと付いてくる。これまでの数年間にわたり研究分担者(数理科学者)らと共同で押し進めてきた単細胞生物粘菌の情報処理アルゴリズム(ネットワーク最適化、時間学習、行動選択)から、アメーバからヒトにいたる広い生物種に共通する情報処理アルゴリズムの存在を予見した。この着想を本研究助成により展開する。 繊毛虫の空間形状適応能:ゾウリムシを転回できないほど細いキャピラリー空間に閉じ込めると,それまで見られなかった長期後退遊泳等を示すことを発見した.また、ゾウリムシがキャピラリー空間をしばらく遊泳すると,その後,広い空間においても直線的な遊泳を示すことを発見した.さらに、テトラヒメナが球状の狭い空間を遊泳していると、壁に添って円形軌道を描くようになり、その後広い空間に出ても円形軌道を描くことを発見した。以上の三つの学習行動のメカニズムを解明するために,従来のゾウリムシ膜電位方程式と繊毛打調節の関係を再検討し,新たな膜電位方程式を構成した.その結果,ゾウリムシの学習行動には繰り返し起こる壁との衝突刺激とCa2+チャネルの遅い反応が重要であることが示唆された.また,短時間の学習行動が膜電位の挙動として理解することができた.この研究により,我々は学習機構の新規概念を提供することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
繊毛虫の空間学習について、どれほど複雑な形状まで学習できるのか、数理モデルの観点から一般的なしくみへと理論的展開をはかる。粘菌行動の多様性とその選択機構についても、粘菌に個別的な数理モデルができているので、行動選択一般の機構として抽象化する。環境適応的なネットワーキングについては、ヒトの社会現象との類似性を、数理モデルの観点から吟味して、共通のネットワーク構成アルゴリズムとして定式化する。来年度は最終年度であるので、これまでの成果を誌上発表できるように論文化作業に注力する。特に、個別的な数理モデルからより一般化されたアルゴリズムへと昇華させることがポイントである。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文取りまとめに関して、当初の予定より時間を要して英文校正や投稿作業が年度をまたいだので、次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文発表のための、英文校正や投稿料の支弁にあてるとともに、最終年度を迎えて研究分担者とより密な打ち合わせに要する国内旅費にあてる。
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