研究実績の概要 |
1.ガラス状態とは何かについて,前年度まで研究成果としてパーシステントダイアグラム(PD)がその構造を理解する上で,有効な数学的記述子であることが明らかになった.すなわちガラス状態のPD図は液体状態とは異なり,特徴的な島構造を有する.問題はそのような島構造はどこからもたらされたものであるかという逆問題である.これを自動的に実施するために分担者平岡グループによりHomCloudというソフトウエアーが完成し,大幅な自動探索が可能となった.これによりガラス構造を特徴付けるリングの階層構造が明らかになり,今後のアモルファス材料の設計指針に重要な役割を果たすこととなった.一方分担者平田らにより,代表的材料であるエポキシ樹脂の不均一構造に関して,電子ビーム測定によりナノ結晶構造が同定された.これは別の手段例えばX線測定及び全原子分子シミュレーションの結果とも整合的なものであり,ミクロレベルの視点から不均一性の起源が明らかにされた結果として重要である. 2.ガラスや粉体などアモルファス状の粒子系は,ソフトセラミクスのモデルシステムとしても重要であり,その流動特性や力学応答を解明する事は,より大きなスケールの粗視化モデルにも役立ち,実用的な理解にも繋がる.とくに分担者齊藤らにより最終年度は分子動力学法による数値計算と理論解析を用いて,主に粉体の剪断流と一様圧縮を調べた.まず,剪断流ではシェアバンドに相当する粒子の異方的な速度分布を調べ,スペクトルの四重極分布を理論的に説明し,さらに不連続シェアシックニングの現象論的な説明を与えた.また,一様圧縮に対する応力鎖の時間変化を定量化し,摩擦力が力の遷移率に与える影響を調べ,グルノーブル(フランス)のグループと共同で実験的な検証も行った.これらは学術論文(2件)とプロシーディングス(2件)にて報告を実施した.
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