研究課題/領域番号 |
26310208
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國府 寛司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50202057)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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キーワード | 力学系 / 臨界的遷移 / 分岐 / 予兆 / 計算トポロジー / 時系列データ / ダイナミクス / 大域的構造 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い,今年度は以下のような研究を行った: 課題Aでは,臨界的予兆の検出に関する先行研究について,特に Cristian Kuehn の研究結果を精密に調べ,特に大域的分岐に関する部分で未解決の問題が残されていることを確認した.これについては,28年度の重要課題とする予定である.また,課題Bでは,2足歩行の歩行・走行遷移の基礎となる,2足歩行の数理モデルにおける,歩行に対応する安定周期解の吸引域の複雑な形状を双曲力学系の理論から説明した結果が論文として刊行された.今後は,特に走行の数理モデルであるコンパス・バネモデルの解析を行い,歩行・走行遷移の問題の検討へと研究を進めていく.課題Cでは,高橋淑子教授(京大・生物学)の研究グループと望月敦史氏(理研)の研究グループと共同して,血管ネットワーク形成の過程における血管リモデリング現象についての研究討論を行い,その数理的メカニズムについての一定の理解が得られた.今後はこれを臨界的遷移現象との関連において捉えることを目指していく.課題Dでは,Miroslav Kramer 氏(東北大学)や Marcio Gameiro 氏(サンパウロ大学)らと,画像の時系列データからパーシステント・ホモロジーの手法を用いてダイナミクスの情報を取り出す研究を行い,空間1次元の偏微分方程式の具体例に対して,その大域アトラクタのモース分解が再構成できることを確認した.この結果は,画像で見える臨界的遷移を,画像の時系列データから数理的に扱うための研究の基礎になると期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨界的遷移の研究において重要な貢献をしている Cristian Kuehn の研究結果がおおむね捉えられ,大域的分岐理論における未解決問題が明らかになった.またパーシステント・ホモロジーの手法を用いて,画像の時系列データによるダイナミクスの解析方法の整備についても一定の進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
28年度は,Cristian Kuehn の結果を大域的分岐理論との関連において進展させることを目指す.また,画像の時系列データによるダイナミクスの解析方法をより一般の場合に拡張し,さらにダイナミクスの遷移を画像の時系列データから捉えるための方法の開発に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関や学外での公務などのために,予定していた海外での研究会の参加をいくつか断念したため.
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次年度使用額の使用計画 |
7月から9月に開催される,本研究の内容に密接に関係する国内外の国際研究集会に参加し,そこで研究発表や情報交換を行う.
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