研究課題/領域番号 |
26310208
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
國府 寛司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50202057)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 力学系 / 分岐 / 臨界的遷移 / 予兆 / 計算トポロジー |
研究実績の概要 |
研究計画に従い,30年度は以下のような研究を行って成果が得られた:課題(A)では,臨界的遷移をランダム力学系の理論と関係づけて,力学系の位相計算理論を用いて臨界的遷移の予兆を検出する可能性について検討を継続した.特に,29年度に考案した,ノイズを含む時系列データからダイナミクスの情報を抽出する MGSTD 法を発展させ,より効果的な情報の表示方法や,計算パラメータの選択の方法について検討した.それを気象データの解析に適用して,北半球冬季の成層圏と対流圏での気圧配置パターンの遷移に関する気象学者の従来の知見と合致する結果を論文にまとめて学術誌に投稿した.この MGSTD 法は,臨界的遷移現象における予兆の検出にも適用できると考えられるので,その更なる検討を継続するために,本研究を31年度に延長することにした.課題(B)においては,前年度からの2足歩行の歩行・走行遷移の解析を継続し,水平方向の移動を考慮した数理モデルの解析を進めた.この遷移メカニズムを,ハイブリッド力学系の新しい分岐現象として論文にまとめる準備を進めている.課題(C)では,前年度に引き続き,血管ネ ットワーク形成の過程における血管リモデリング現象についての解析を進めた.課題(D)においても,前年度からの画像の時系列データからパーシステント・ホモロジーの手法を用いてダイナミク スの情報を取り出す研究を継続した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の中で,ノイズを含む時系列データからダイナミクスの情報を抽出する MGSTD 法と呼ぶ新たな時系列解析法を論文にまとめて投稿した.これは従来の臨界的遷移の予兆の検出とは異なるアプローチであり,従来の方法を補完するものとして有望であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
30年度が最終年度であるが,期間延長をして,特にノイズを含む時系列データからダイナミクスの情報を抽出する MGSTD 法を,臨界的遷移の予兆の検出に応用し,従来の方法との比較検討を行う.また,そのほかの課題についても論文作成を進め,成果の取りまとめを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
30年度が最終年度であるが,ノイズを含む時系列データからダイナミクスの情報を抽出する MGSTD 法が,本研究の目標である臨界的遷移の予兆の検出に有効な新しい方法となる可能性を認識したため,期間を延長してその可能性を検討することとした. 次年度はその検討のために研究員の雇用経費に使用額の大部分を充て,その残りは関連する成果発表の経費として使用する計画である.
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