研究課題/領域番号 |
26310209
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中根 和昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10298804)
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研究分担者 |
木田 勝之 富山大学, その他の研究科, 教授 (00271031)
瀧山 晃弘 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00374520)
真原 仁 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00589830)
末松 信彦 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80542274)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | ホモロジー / 組織の定量評価 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
近年のデバイスの開発で、組織の画像がデータとして多く保存されるようになった。組織画像の観測から得られた情報は、全体の性質を類推する上で非常に重要であるため、その画像解析技術のニーズは高い。画像解析の手法には、フーリエ解析やパターン認識技術をはじめ多くの手法が発展し、実績を残してきた。しかし、生体組織画像や金属組織画像などの様に、少し画像が複雑になるだけで従来の手法は有効に機能しない。このため、これらの組織画像の分析は技術者による直接の観察などによる人間の作業に依存しているのが現状である。この手法では処理する量には限界があるうえ、処理結果が観察者の技量・主観により左右される場合があるため、組織の状態の客観的指標による定量化は必要不可欠である。もし組織画像データを数理的な客観的手法で定量的に評価し、これらをインデックス化できれば、分野を越えてデータを連結することが可能となる。組織画像情報が多種類の情報と連結されれば、一見無関係に見える現象の関連性を浮かびあがらせ、分野を超えた共通の数学構造の発見の契機になりうる。 医学や工学分野で実際に現れる組織画像は、組織構成要因が複雑なため、数学でよく研究されている反応拡散方程式などによる自己組織化の方法では、再現が難しいものが多い。そこで、我々はこれまで解析に有効な手段を持たなかった病理組織画像や金属組織画像に対して、ホモロジーの概念を核としたアルゴリズムを提案した。 『組織とは構成要素間の接触によって形成される。ホモロジーは「つながりの程度を表す概念」でもあるが、単位面積当たりのベッチ数の分布を調べることで組織の分類を行う。』 現在、各種組織に対して適用を行っているが、それぞれの分野で実績が出てきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ホモロジーを核とした組織画像解析手法を実証化することである。組織解析の新手法が提案したので、次の研究のステージとして、このアルゴリズムを現実の問題に適用して、実際に問題を解決するアプローチを進めている。本研究を通じて、本手法の有効性が確認できれば、組織形成の数学的共通構造の発見のための基盤技術になりうる。 現在分担者がそれぞれの立場で組織解析の研究を進めているが、「金属組織に関しては焼き入れによる組織変化に対して国際学会のBest paper Award受賞」「癌組織に関しては、癌病変組織抽出法として病理学の国際誌に掲載される」「反応拡散方程式を用いて組織補完を併用する事で、非常に有用であることが分かった(国際会議セレクテッドペーパーとなった」「自己組織化による組織形態の、組織の弁別に対して有用な結果を得た」「膨潤現象と呼ばれる現象がある。これは溶媒が繊維質の場合で、溶質がしみこんだ場合に”膨れる”現象である。これの定量評価を行った。具体的には、猿の発情期に臀部が膨らむ場合であるが、有効な結果となった」など、各方面で顕著な結果が出ており、順調に研究が進んでいるばかりか国際的にも一定の評価を得た。 また、新たに、ミクログリアの活性化の定量化に対して本手法が有効であることが分かってきた。このため、新たに分担者として専門家に研究グループに参加して頂いた。当初予定していたように非常に汎用性の高い方法である。
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今後の研究の推進方策 |
ホモロジーは量子力学など、理論物理学の発展に大きく寄与してきた。しかし、あまりに抽象的な数学のため、一般的に使用されることはなかった。今回、組織の接触の程度を定量化する手法として、画像解析法の一つとして応用の提案を行った。現在、癌組織・破断面・金属の組織などに応用分野が広がりつつある。今後、これらの組織に適用して、詳細な分析を伴う研究を積み重ねていくと同時に広く応用例を探して、適用範囲を増やしていきたい。 これまでとは全く違う手法で有るので、いろいろな分野で広く講演をすることを経て、方法の浸透に努めていきたい。 これまで全く解析方法を持たなかった複雑な組織に対して、客観的な指標による定量化法が確立されたので、おのずとマーケットも見つかると思われる。今後、学問的側面のみならず、イノベーションにも結びつくように考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文は採択されたものの、掲載までに時間がかかり年度内の決算が間に合いませんでした。またソフト開発のために執行しようとした予算が有りましたが、学内手続きが遅れましたので、決済ができませんでした。
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次年度使用額の使用計画 |
以上の理由から、年度明け早々に決済ができると思われます。今後、計画通りに執行していきたいと考えております。
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