本年度は,量子情報デバイスの標準的基本模型となる(一般化された)量子Rabi模型の研究を中心に行った。特に,前年度までの研究結果を回路量子電磁気学の模型に応用し,場の量子論的観点から,仮想光子と実光子との違いが出現する様子を理論的に調べた。超伝導回路上で,ジョセフソン接合を持った超伝導LC回路で2準位人工原子を,マイクロ波で光子を与え,原子と光の相互作用を量子シミュレーション的に記述する数理模型を解析したが,回路上でバイアスエネルギーが無い場合は量子Rabi模型と呼ばれ,パリティ対称性を持つハミルトニアンとなるが,バイアスエネルギーが有る場合は一般化された量子Rabi模型と呼ばれ,そのハミルトニアンはパリティ対称性を持たない。原子と光の相互作用が強い「超強結合領域」においては,光子の場の2次の相互作用が無視できなくなるので,(一般化された)量子Rabi模型に対するこの2次の相互作用の影響を調べた。2次の相互作用が無いとき,バイアスエネルギーが無くハミルトニアンがパリティ対称性を持つと,シュレディンガーの猫風状態が主要項となる。一方,バイアスエネルギーが有りハミルトニアンがパリティ対称性を失うと,主要項からシュレディンガーの猫風状態が無くなる。2次の相互作用があるとき,仮想光子から実光子の表現へ移行するため,原子核のメゾン・ペア理論を適用し,ハミルトニアンの各量子状態の主要項を求めた。バイアスエネルギーが無い場合は,やはりシュレディンガーの猫風状態が主要項となり,さらに,バイアスエネルギーが有る場合でも,シュレディンガーの猫風状態が復活することが分かった。すなわち,この復活は2次の相互作用の影響であり,その影響は2準位原子の情報をもたらすことも分かった。
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