研究課題/領域番号 |
26310302
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
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研究分担者 |
西脇 淳子 茨城大学, 農学部, 助教 (00549892)
小松崎 将一 茨城大学, 農学部, 教授 (10205510)
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 環境調和型農林水産 / 気候変動 / 土壌圏現象 / 土壌学 / 微生物 |
研究実績の概要 |
茨城大学農学部附属フィールドサイエンス教育研究センター内の耕起・不耕起連用畑試験区(ダイズと緑ナスの2栽培区で実施)において、 不耕起栽培土壌の特性を耐水性団粒の粒径プロファイル、化学性、生物活性、微生物群集構造の観点から解析した。土壌の化学性は、全炭素、有機炭素、全窒素、pH等を測定し、土壌団粒の分画は、水中篩別法にしたがって、粒径>2 mm、1~2 mm、0.5~1 mm、0.1~0.25 mm、<0.1 mmの5画分を調製した。さらに、畑地試験区土壌にガス採取管を設置して、土壌表層2.5~40 cmの層位における土壌空気の組成(二酸化炭素、メタン)をガスクロマトグラフィーで分析した。微生物群集構造は、土壌DNAを調製して、16S rRNA遺伝子のPCR増幅産物のメタシークエンスで解析した。その結果、不耕起栽培により、粒径>2 mmの耐水性団粒が年間を通して安定的に高くなること、糸状菌のバイオマスが上昇すること、細菌群集の多様性が高まることが明らかにされた。土壌で優占した細菌種はAcidobacteria門とProteobacteria門であり、不耕起区ではProteobacteria門の割合が高くなる傾向が明らかにされた。また、物質循環のマーカーとなる気体として二酸化炭素とメタンに着目し、土中濃度を測定した結果、二酸化炭素濃度は不耕起区<耕起区、メタン濃度はその逆で不耕起区>耕起区となることが観察され、不耕起土壌では、有機物の嫌気分解によるメタン生成の亢進ないし好気的メタン酸化の抑制が起こっていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理性、化学性、生物活性、微生物性という多角的な観点から、複数の栽培試験区を用いて、さらに年間調査を踏まえて、不耕起栽培畑地土壌の特性を明らかにすることができた。これは、専門分野を超えた共同研究体制の成果と言える。この結果をもとに、平成28年度は、微生物の群集構造(分類面でのメタゲノム解析)から機能遺伝子解析(機能面でのメタゲノム解析)へ展開する。なお、平成27年度に予定していたスラリー連用畑地(都城試験地)の分析は、圃場管理者が異動になり実施できなくなったため、その代わりに茨城大学の試験区を増やして行った。
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今後の研究の推進方策 |
微生物の群集構造(分類面でのメタゲノム解析)から機能遺伝子解析(機能面でのメタゲノム解析)へ展開する。その展開では、耐水性団粒サイズの違いに焦点をあてる。すなわち、団粒サイズと機能遺伝子プロファイルの関係を明らかにする。この解析によって、土壌中での物質循環の微視的な様態が初めて明らかになることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究計画では、機能遺伝子のメタゲノム解析を実施する。平成27年度に行った微土壌微生物群集構造の解析結果を検討した結果、機能遺伝子メタゲノム解析に供する試料数を増やすこととした。そのため、平成27年度にデータ解析補助で予定していた謝金費を次年度の物品費と謝金費の増額に充てるように調整した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費中の遺伝子解析の試薬代とデータ解析補助の謝金費として使用する。
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