研究課題/領域番号 |
26310305
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
横沢 正幸 静岡大学, 工学研究科, 教授 (80354124)
|
研究分担者 |
飯泉 仁之直 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (60616613)
櫻井 玄 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (70452737)
朝日 弓未 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (40453823)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2018-03-31
|
キーワード | 食料需給 / 水資源 / 異常気象 / 生産性ショック / 経済影響 |
研究実績の概要 |
広域作物生産性推計モデル(PRYSBI-2)を全球水資源量推計モデル(H08)と結合させたモデルを作成した(以下、結合モデルとよぶ)。結合モデルによって、作物側から要求される水量の推計とそれに対応する灌漑に利用可能な水量の推計が行えるようになった。この結合モデルを、中国東北部に位置する遼寧省・吉林省・黒竜江省を対象として、松花江と嫩江に挟まれた領域に適用し、流域水資源量の変動と流域における作物生産量の関係を解析した。流域上流、中流および下流において土地利用が変化し河川による水資源量の利用が変化した場合について、流域全体の作物生産への影響に関するシミュレーションを行った。この地域では、降水量の減少傾向と農業生産性の低下が関係づけられていたが、その解析に灌漑の効果を取り入れることにより、より現実性の高い解析を行うことが可能になった。成果は論文としてまとめて国際誌に投稿した。今後、結合モデルを用いて気候変化による降水量変化が生産量に対する影響の評価を行う予定である。 生産性ショックが市場経済へおよぼす影響を評価するためのモデルの作成に向けて、既存の農業食料に関連した経済モデルのサーベイを行った。その結果、生産性ショックの影響が農業以外の産業セクターに伝搬する過程を記述するには、静的な一般均衡モデルではなく、動的なモデルが必要であることが分かった。そして、各国の産業セクターをエージェントとするエージェントベースモデルにより経済モデルを作成することとした。今後、関連研究動向をサーベイするとともにモデルのコーディングを行う。また、過去の世界貿易や価格の動向をまとめたGTAPデータを用いて、エージェントベースの経済モデルのパラメータを最適化する手法についても検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広域スケールで作物生産性と水資源量を推計する結合モデルを計画通り作成した。これにより異常気象による生産ショックを高精度で評価することができる。また、生産性ショックが世界経済におよぼす影響の伝搬を記述するモデル構造を決定した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度作成した結合モデルは今後、気候変化による降水量変化による影響評価を行う予定である。また、結合モデルのモデルパラメータに関するキャリブレーションを全球で行う。その際、キャリブレーションに必要なデータをインターネット上で効率よく検索するために、関連データを自動的に検索し収集するクローラーを設計し試用する。また、キャリブレーションを効率よく可能にするアルゴリズムの改良も行う。 エージェントベース一般均衡モデルのコーディングを開始する。その際、農業・食料部門については、農林水産政策研究所で開発運用している部分均衡モデルであるIFPSIMのパラメータを参考にする。 全球スケールの土地利用データベースの整備を始めるとともに、既存の土地利用変化推計モデルの文献サーベイを行なう。また、国内外の同様のモデルを開発利用している研究者と情報交換を行い、既存モデルの問題点の洗い出しとその解決を視野に入れた土地利用モデルを設計する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
生産性ショックの伝搬を記述する経済モデルのパラメータを決定するために必要なGTAPデータの購入を、その経済モデルの構造が決まるまで保留していたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
エージェントベースによる経済モデルのキャリブレーションと検証を行うために、過去の経済状況の時系列を収録しているGTAPデータベースを購入する。
|