研究課題/領域番号 |
26310311
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢部 光保 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20356299)
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研究分担者 |
凌 祥之 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10399363)
立川 雅司 茨城大学, 農学部, 教授 (40356324)
田中 宗浩 佐賀大学, 農学部, 教授 (50295028)
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60292786)
大嶋 雄治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70176874)
高橋 義文 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60392578)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 消化液濃縮 / メタン発酵 / 液肥利用 / バイオガス / 水素社会 / 自立分散型エネルギー |
研究実績の概要 |
海外調査については、米国での有機液肥認証調査を実施した。また、韓国済州道においては、液肥を扱う3箇所の施設(共同資源化施設2箇所、液肥流通センター1箇所)とともに、液肥の提供を受けている大規模露地野菜生産法人について現地調査を実施した。この調査では、家畜糞尿の集荷・処理と液肥の農地還元といったプロセスがどのように行われているかを確認したほか、液肥の耕種部門への供給をめぐるミスマッチが発生する理由と改善点を明らかした。 液肥濃縮技術については、欧州における最新技術とその収益性について文献調査を実施してきた。他方、国内技術としては、グラインダーを用いて有機性廃棄物をナノレベルまで粉砕することで、メタン発酵の効率を高めるとともに、ナノ化した消化液を膜分離で濃縮するという画期的技術について、大分県国東市を事例に収支計算を行った結果、この新技術の導入効果が極めて高いことが明らかになった。 液肥への化学物質残留調査については、福岡県築上町、大木町、熊本県山鹿市および大分県日田市より液肥サンプルを入手し、重金属についてはJIS法に準拠して、環境ホルモンについてはGC-MSで、さらに農薬や生活系医薬品など約1,000項目についてはLC-TOF-MSを用いて一斉分析を行った。その結果、重金属として微量のカドミウム(検出限界以下、0.02、0.01、0.08 mg/L)、銅(1.4、2.8、6、 31 mg/L)が検出された。環境ホルモンとしては、毒性の高いトリブチルスズおよびPFOSが検出限界以下であり、その他の化学物質では各地点数十種類が検出されたがいずれも問題の無い濃度であった。これより、液肥からはある程度の汚染物質は検出されたものの、いずれも現状のレベルでは、問題はないと判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査においては、1)米国における有機液肥利用状況や有機認証制度について調べてきたが、論文にまでは仕上げていない。最終年度では集めた資料を分析し、論文にとりまとめる。2)韓国調査では、昨年度の調査結果を踏まえ、畜産糞尿の集積と液肥利用のミスマッチの解消、野菜作への利用拡大について、調査を行ったが何点か調査を残した点がある。欧州における液肥利用においては、再生可能エネルギー政策による制度的支援が極めて重要である点が明らかになり、その支援によって、液肥利用が進展してきたと予想されるので、本年度はこの点を重点的に調査したい。 ナノ化技術を用いた液肥濃縮技術の収益性試算を行ったが、実際に稼働している施設で調査したものではない。そこで、今年度は、建設が進む施設を対象に実際のデータを集め、濃縮液肥利用の技術的、経済的分析が残されている。また、昨年は日田市の農家を対象に液肥利用に向けたアンケート調査を実施し分析を進めてきたが、論文に仕上げることが残されている。 残留化学物質、環境ホルモン等の分析については、順調に進められてきているので、さらなるデータの蓄積を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、以下のように研究を予定している。1)基盤的条件の比較分析チームでは、米国における有機液肥利用状況や有機認証制度の調査資料を分析し、論文にとりまとめる。また、平成27年度に実施した韓国済州島での調査結果を踏まえて補足調査を行い、韓国における液肥利用拡大の成功要因、および液肥を利用した園芸作物の利用実態などを明らかにする。さらに、欧州におけるバイオエネルギーの固定価格買取制度の展開や液肥濃縮技術の現状に関して現地調査を実施し、その結果を踏まえて有機性廃棄物の循環、消化液濃縮とその液肥利用について政策提言を行う。 2)利用環境の高度化チームでは、福岡県宗像市の大規模肥育農家で導入予定のナノ化によるメタン発酵消化液濃縮技術について詳細な分析を行う。また、昨年度実施した日田市農業者の液肥利用に関するアンケート調査を取りまとめる。さらに、米国調査の結果を踏まえ、有機液肥認証について我が国における政策的含意を導く。 3)最適システムの構築チームでは、ナノ化による液肥濃縮技術およびバイオマス由来エネルギーの固定価格買取制度の展開を踏まえ、売電収入はもとよりガス・熱販売収入の獲得可能性を高めた、新たなビジネスモデルを提案する。 4)環境経済影響評価チームでは、昨年度に引き続き、福岡県築上町、同大木町、熊本県山鹿市、大分県日田市の液肥サンプルを収集し、重金属はJIS法に準拠して、環境ホルモンはGC-MSにより、農薬や生活系医薬品など約1000項目についてはLC-TOF-MSを用いて一斉分析を実施し、これらの物質について環境汚染の可能性の調査結果を取りまとめる。加えて、メタン発酵消化液の液肥利用による環境影響への低減と地域経済への影響についても分析結果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内打ち合わせ旅費が、中間年度であったために、支出額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、最終年度であるため最終報告会を行い、残額がゼロになるように執行する。
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