研究課題
処理すべきデータが1つずつ順々に到着する状況で,データが1つ到着するたびに計算を行なって結果を出力するような計算手順を「オンラインアルゴリズム」と呼ぶ.オンラインアルゴリズムの分野においてよく知られる問題に「ページ移動問題」と呼ばれる問題がある.この問題はネットワークのノードに保持されるページに対するアクセス要求が順々に発生する状況で,ネットワークの負荷を最小化するようにページの保持ノードを計算する問題である.この問題は基本的な問題の一つとして認識され,長年研究されているが,今でも最適な結果を計算するオンラインアルゴリズムがどのようなものかよく分かっていない.ページ移動問題のオンラインアルゴリズムの性能は,競合比と呼ばれる,1に近いほど性能が高いことを意味するパラメータで評価されるが,「あらゆる条件下で,競合比が本質的に3であるアルゴリズムが存在する」という予想が存在した.本研究では,この予想が成立しないこと,すなわち,「特定の条件下では,どのようなアルゴリズムをもってしても,競合比は本質的に3より大きい」という事実を数学的に証明することに成功した.続いて,オンラインアルゴリズムを設計する道具の一つである「仕事関数」に着目し,2次元ユークリッド空間上での仕事関数について詳細に調べた.その結果いくつもの関数が複雑に貼りあわさった構造を持っていることが明らかになった.これをそのままオンラインアルゴリズムに応用することは困難であったが,別のアプローチを通してオンラインアルゴリズムを設計した.最終年度である今年度はリングネットワーク上でのアルゴリズムを設計した.これらのアルゴリズムはいずれも,ページサイズが最小であるという限られた条件の下ではあるが,長年改善が可能かどうか明らかでなかった既存の結果を上回る性能を持つことを明らかにした.
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Algorithms
巻: vol. 9, no. 3 ページ: 57:1-7
DOI:10.3390/a9030057
http://carrera.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/