研究課題/領域番号 |
26330009
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (00256471)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 計算折り紙 / 計算幾何 / アルゴリズム / 計算量 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「折り」と「展開」という枠組みで捉えられる諸問題を効率良く解くアルゴリズムを研究開発することである.この枠組みは,例えば宇宙空間での太陽電池パネルの展開,車のエアバッグ、DNA の構造解析など,幅広い応用をもつ.こうした折りの問題に対して,計算機科学,特にグラフ理論とアルゴリズム理論を活用することで,現実社会に役に立つアルゴリズムを開発することを目指す.従来のグラフアルゴリズムのモデルでは,主に頂点とその間の関係だけを使って問題を抽象化してきた.本テーマでは,より具体的な問題を扱うために,幾何的な構造を取り入れたモデルを提案し,その上での効率のよいアルゴリズムの設計と開発を行う.これまでの研究として、1次元の折り紙に等間隔な折り目をつけ、そこに山折りと谷折りの割り当てを定め、これに合致する折りたたみ状態の数え上げや、「最適」な折りたたみ状態に関する研究を行ってきた。端的には、同じ折り目に対しても指数関数的な組合せの折りたたみ方が存在し、その中でも折り目に負担がかからない折りたたみ方を求める問題は、一般には手に負えないことを示してきた。本研究の目的として、1次元、つまり線分の折りたたみを通常の2次元平面に拡張することと、等間隔の折り目を一般の折り目に拡張することをあげている。平成26年度は折り目を等間隔から一般の折り目に拡張する問題を中心に研究した。この場合、紙の厚みの測り方がそもそも明確ではない。部分的に重なっている場合などの扱いに工夫が必要である。こうした場合に対するいくつかの基準を提案し、それぞれの最適化問題の研究を行い、ある程度の結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者による既存の研究モデルは、1次元、すなわち線分の上の折り紙であり、さらに折り目は等間隔なものを考えていた。これは考えられる中でももっとも単純で基本的な「折り紙」のモデルであるといえよう。通常の計算折り紙といった場合は、1次元を2次元に拡張し、さらに等間隔でない一般の折りを考えるのが自然である。このうちの折り目を一般の場合に拡張するという目標は、平成26年度はおおむね達成できたものと考えている。具体的には、一般の折り目における一次元の紙の折りたたみにおいて、紙の厚みを薄くする最小化問題を定式化して、その困難性を示すことに成功した。等間隔の場合と違って、いくつかの異なる指標を与えることができ、この問題そのものの持つ多様性も明らかになった。 ただ、1次元の場合は等間隔を一般の間隔にするということは、単に距離を「同じ間隔」から「一般の間隔」にすればよいが、2次元平面においては、さらに角度の問題が出てくるため、問題はさらに複雑になる。まずは等間隔な折り目を持つ2次元平面を考えて、次に例えば斜め方向の折り目を許し、さらに一般の等間隔でない折り目をもつ場合へと順番に拡張していくことが必要となろう。
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今後の研究の推進方策 |
まずは1次元の線分上で考えていた諸問題を2次元に拡張することを目指す。この場合、まずは等間隔の折り目に戻して、例えば大きさn×mの格子状の紙を折る問題を考える。この問題は実は「地図折り問題」と呼ばれていて、一般の場合の難しさは未解決問題である。ごく最近、具体的には2012年にMITの研究グループが、この問題の2×nという非常に限定された場合について、解法を与えることに成功した。しかしその解法は極めて複雑であり、効率もかなり悪い。まずはこのあたりの解析を進めて、より単純な解法を与えるというのが妥当な目標であろうと考えている。単純化がうまくいけば、それを一般化して、より困難なケースへの解法へとつながっていくと予想できる。ここが劇的に単純化できれば、さらに斜め方向など、より複雑な場合の解析へとつながっていくことが期待できる。
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