研究課題
本研究は「幾何的な構造をもつグラフ」に研究対象を限定することで,従来は手におえないとされてきた問題を実用的な時間で解くアルゴリズムを研究開発することが目的であった.対象を限定するといっても,ある程度の一般性をもたせて,応用範囲をなるべく広く考えられるようなモデルの構築と,その上で効率良く動作するアルゴリズムの研究開発をめざした.研究最終年度である平成28年度は,最終的には翻訳書籍を2冊,査読つきのジャーナル論文を4編,審査つきの国際会議発表を6件行った.典型的な研究成果を二つあげる.まず近年急速に発展している計算折り紙があげられる.例えば,一般に与えられた多角形と,そこから折れる凸多面体の間の関係は,わかっていることがほとんどない.本研究では,面積30の多角形の中に,3通りの異なる箱を折れるものがあることを初めて示した.一つの多角形から,折り方を変えるだけで複数の別々の箱が折れるという事実すら,一般にはあまり知られておらず,ましてや3通りのまったく違う箱が,一つの展開図から折り方を変えるだけで得られるという事実は,非常に斬新な結果であり,長年の未解決問題に対する解答を与えている.この問題の解決のために,非自明な折りの判定アルゴリズムを新規に開発し,さらにスーパーコンピュータを数ヵ月使用した.また,一つの点のまわりに放射状に広がった折り線に沿って折るという単純なモデルについても研究し,これを数え上げて列挙する効率のよいアルゴリズムを研究開発した.こうした折りに関する基礎研究は,今後は梱包への応用などが見込まれる.また,より抽象的な意味での幾何的な構造をもつグラフの数学的な特徴を明確にする研究も実施して,いくつかの成果を得た.こうした構造の特徴づけは,効率のよいアルゴリズムを開発する上での基礎研究であり,今後のアルゴリズム開発への応用が見込まれる.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件) 図書 (2件)
Journal of Information Processing
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
COMPUTATIONAL GEOMETRY: Theory and Applications
巻: 64 ページ: 1-17
10.1016/j.comgeo.2017.03.001
Discrete Applied Mathematics
巻: 216 ページ: 130-135
10.1016/j.dam.2015.05.035
IEICE Trans. on Inf. and Sys.
巻: E99-A ページ: 1084-1089
10.1587/transfun.E99.A.1084