本研究は,「超高速,高確率かつ高品質解」を設計基準として,アルゴリズムの設計技法の開発および計算能力限界の解析を目的としてスタートした.その結果,本年度を含む研究期間全体を通して得られた主要研究成果は,以下の通りである. 1.グラフの頂点除去問題に対する近似アルゴリズムの設計法の開発. 1-1.制限次数除去問題では,グラフGおよび各頂点の次数制限が与えられ,Gから削除すると,残っているどの頂点も次数制限をみたすようなGの頂点集合の中で,最小コストのものを計算する問題である.新しいアルゴリズムにより,最大次数制限が5以下の場合に,従来手法による近似保証を改善できることを示した. 1-2.制限次数除去問題を有向グラフ上の問題へ拡張し,その近似可能性について検証した.1)すべての頂点について入次数,出次数ともに制限されている場合,無向グラフにおいて知られている最良の近似保証を有向グラフ上の場合へ拡張できること,2)全頂点ではなく,一部頂点のみが次数制限される場合,最大次数制限より良い近似度を保証することはNP困難となるのに対し,入次数のみが部分的に制限される場合は,最大次数制限+1の近似保証が可能であること,を示した. 1-3.kパス頂点被覆問題では,入力グラフGから削除すると,k頂点上のパスが残らなくなるようなGの頂点集合の中で,最小コストのものを計算する問題である.更に連結グラフを誘導するような解(頂点集合)を求める問題について考え,重みなしの場合はk倍近似可能であり,重みつきの場合はkが3以下であればnの対数オーダーで近似可能であることを示した. 2.辺支配集合問題EDSの拡張と近似可能性の究明.EDSでの支配回数を2へ拡張した2-EDS問題に対し,1)定数時間分散アルゴリズムを用いて2倍近似可能であること,および2)更に解に連結性を要求しても,2倍近似可能であること,などを示した.
|