研究課題/領域番号 |
26330016
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今井 勝喜 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20253106)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セルオートマトン / 準周期タイル / 等方性 |
研究実績の概要 |
セルオートマトンではセル空間上の各セルの状態変化によって伝搬する信号を構成しその相互作用により計算を行う。準周期タイリング上のセルオートマトンは従来の正方格子によるセルオートマトンより等方的な性質が強いと予想され格子の性質がマクロな挙動に現れにくく、化学反応系のシミュレーション等に有効と考えられる。本研究では、準周期タイリング上のセルオートマトンにおける信号伝搬の性質を、その等方性に着目して調べることを目的にしている。まずよく知られているペンローズタイルやアンマンタイルの場合にそのタイリングのコロナの形状について調べている。準周期タイルのコロナはそのタイリング上のセルオートマトン上の信号の最大の伝搬速度を規定する。ペンローズタイルの場合はタイルがひし形、カイトダートか、またその近傍が頂点隣接、変隣接かにかかわらず、コロナの極限は正10角形になることを昨年度までに示していたが、厳密な証明を与えるまでには至らなかっため本年度はそれを証明した。ペンローズタイルには、ある特別な線分を各タイルに引いておくと正しいタイリングの場合にはそれらの線分が直線をなす性質を持つアンマン棒と呼ばれる5組の平行な直線群があり、それら直線群がなす10角形にそってセルオートマトンの信号が拡散することを用いて、正10角形に漸近することを証明した。結果はAUTOMATA 2016に採録され、発表予定である。 さらに、一般の場合にそのタイリングの射影の次元との関連を調べる過程で周期タイリングの場合も想定外も予想していなかったコロナ極限を持ち得ることが明らかとなった。コロナ極限は平面タイル張り可能なタイルになると予想していたが、正多角形タイルのみによる一様な周期タイリングに限っても8, 10, 16角形といったタイリング自体が持つ回転対称性とは異なる辺数の多角形になりうることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ極限の性質を調べるだけでなく、ペンローズタイル上の大きな半径の近傍を持つセルオートマトンの高速なシミュレーションのための手法の開発も行う予定であったが、現時点でまだ完成していない。この遅れは、周期タイリングにおけるコロナ極限について、上述のような新たな知見が得られたため、その性質を調べることを優先することに予定を変更したことによる。高速なシミュレーションのための手法の開発は平成28年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
周期タイリングの場合に得られた新たな知見を踏まえ、コロナ極限の形状を周期タイリングと準周期タイリングの双方で詳しく調べる必要が出てきた。特に回転対称性に直接対応する正多角形になる場合と、それ以外の多角形になる場合の違い、すなわち見かけの対称性がなくても頂点が形成される理由を明らかにする。また、周期タイルにおいても、そもそも多角形になることすら自明ではないし、今年度の知見により複雑な周期タイルでコロナ極限が正8角形に非常に近い形に成長していくようなことが可能かもしれない。平成28年度は前期に周期タイリングに関して上記の点に関して集中的に調べ、その結果を準周期タイルの場合と比較検討することで、準周期タイリングのコロナ極限について明らかにしていきたい。 また、昨年度完成できなかった高速なシミュレーションのための手法の開発を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際ワークショップに招聘した研究者の旅費、滞在費が想定より少し少なかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度6月にスイスで開催されるワークショップに参加する費用として追加する。
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