• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

グラフの幅パラメータ計算:コミットメントの理論と実用アルゴリズム開発

研究課題

研究課題/領域番号 26330021
研究機関明治大学

研究代表者

玉木 久夫  明治大学, 理工学部, 専任教授 (20111354)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード木幅 / 木分解 / 正例駆動 / 動的計画法
研究実績の概要

木分解の新しいアルゴリズムをふたつ開発した。ともに、既存の動的計画法アルゴリズムを正例駆動の観点から見直した結果である。

ひとつは、古典的なArnborg, Corneil, Proskurowski(ACP)のアルゴリズムに基づいている。グラフGと正整数kを入力とし、Gの木幅が与えられた正整数k以下であるかに答える判定問題を考える。Gにおいて連結な頂点集合Cとその隣接集合Sの対(S, C)をブロックと呼ぶ。ブロック(S, C)は、Sの要素数がk以下のとき適切であるといい、G[S \cup C]の木分解でSを包含するバッグを持つものがあるとき実行可能であるという。ACPアルゴリズムは、まず適切なブロックをすべて列挙し、それぞれのブロック(S, C)が実行可能であるかどうかを、Cの小さい順に、自然な再帰規則によって決定して行く。我々のアルゴリズムは、適切なブロックを列挙せずに、実行可能なブロックのみを、同様の再帰規則を用いて生成して行く。このACPアルゴリズムを正例駆動化した我々の実装はアルゴリズム実装・実験のコンテストであるPACE(The Parameterized Algorithms and Computitional Exceperiments Challenge)2016 の木幅厳密解部門で優勝をおさめ、国際会議IPEC2016において表彰された。
もうひとつは、BouchitteとTodincaの動的計画法(BTアルゴリズム)に基づいている。BTアルゴリズムも主に理論的なアルゴリズムであり、実用的な実装の可能性が軽んじられていたが、これに対しても正例駆動化に成功して実装を行った。この実装は、木幅のベンチマーク問題でこれまで最適解が計算できていなかったものの多くに対して最適解を与えるなど、既存手法の性能を大きく凌駕するものになっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上述のPACEコンテストに参加し、木幅アルゴリズムの実装に努力するなかで、正例駆動のアプローチに想到したことが大きな契機となり、木幅計算の分野、特に実用的なアルゴリズムの開発において既に大きな貢献ができている。さらに、ふたつのアルゴリズムの実装を通じて、さらなる改良についての多くのアイディアを得ており、それらのアイディアをひとつひとつ試して行くことで、当初目標とした以上の成果が得られることが期待される。

今後の研究の推進方策

BTアルゴリズムの正例駆動版については、そのアルゴリズムの記述・正しさの証明と実験結果をあわせてすでに論文としてまとめ、arxiv プレプリントとするとともに、国際会議に投稿済みである。今後は、この研究のなかで見えてきた次の二つの課題を中心に、さらなる成果を目指して行く。
1.極小セパレータと潜在極大クリークの列挙。上述の論文で述べた実験的解析によって、BTアルゴリズムの実行時間のボトルネックがこれらの組み合わせ対象物の列挙部分にあることがわかっている。我々の正例駆動版は、この列挙を回避することにより高速化を達成している。列挙そのものを高速化することによりBTアルゴリズム自体が正例駆動化なしに高速化できる可能性があり、これは実用上も理論上も追及する価値がある興味深い問題になっている。
2.安全なセパレータの判定アルゴリズムと、その有効性に対する実験的評価。安全なセパレータはBodlaenderとKosterにより導入された概念で、最適な木分解のなかにそのセパレータを含むものが存在するという性質を持っている。もしSがGの安全なセパレータであるならば、Gの木幅を求める問題は、G[V(G) \setminus S]の連結成分Cのそれぞれに対して、独立にG[N[C]]においてN(C)をクリーク化したグラフの木幅を求める問題に帰着される。ここで、N(C)およびN[C]は、Cの閉じた近傍と開いた近傍をそれぞれ表す。実験により、木幅問題のベンチマークインスタンスのなかに、安全なセパレータを数多く含むことが分かっている。それらのインスタンスに対しては、安全なセパレータを高速に検出するアルゴリズムは、木幅計算そのものの高速化に直結する。

次年度使用額が生じた理由

2016年度は木幅アルゴリズムの新しいアイディアに基づいた実装に全精力を集中し、国際会議への参加も共著者に任せられる場合は任せるなどして、出席を控えた。そのために、旅費が未使用になったことが主な理由である。

次年度使用額の使用計画

2016年度に多くの研究成果が得られたため、2017年度は国際会議での発表を積極的に行う。実際、9月開催の国際会議へ投稿ずみである。また、国際的なアルゴリズム実装コンテストに参加しており、表彰される場合には自分だけでなく、協力学生もその表彰式に派遣する予定である。全体として、数件以上の海外出張を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Positive-instance driven dynamic programming for treewidth2017

    • 著者名/発表者名
      Hisao Tamaki
    • 雑誌名

      CoRR

      巻: abs/1704.05286 ページ: -

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Treedepth Parameterized by Vertex Cover Number2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuaki Kobayashi, Hisao Tamaki
    • 雑誌名

      11th International Symposium on Parameterized and Exact Computation,

      巻: - ページ: 18:1-18:11

    • DOI

      10.4230/LIPIcs.IPEC.2016.18

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A faster fixed parameter algorithm for two-layer crossing minimization2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuaki Kobayashi, Hisao Tamaki
    • 雑誌名

      Information Processing Letters

      巻: 116(9) ページ: 547-549

    • DOI

      10.1016/j.ipl.2016.04.012

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Computing Directed Pathwidth in O(1.89^n) Time2016

    • 著者名/発表者名
      Kenta Kitsunai, Yasuaki Kobayashi, Keita Komuro, Hisao Tamaki, Toshihiro Tano:
    • 雑誌名

      Algorithmica

      巻: 75(1) ページ: 138-157

    • DOI

      10.1007/s00453-015-0015-9

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Finalizing tentative matches from truncated preference lists2017

    • 著者名/発表者名
      Hisao Tamaki
    • 学会等名
      MATCH-UP 2017
    • 発表場所
      Microsoft Research New England (Boston)
    • 年月日
      2017-04-20
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi