研究課題/領域番号 |
26330025
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
村松 正和 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70266071)
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研究分担者 |
土谷 隆 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00188575)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 錐線形計画 / 半正定値計画 / 2次錐計画 / 退化 |
研究実績の概要 |
1. 多項式最適化問題に対する半正定値計画の応用に関して、問題が必要な条件を満たさずに手法自体が精確な計算のもとでは最適値に収束しないことが明らかであるにもかかわらず、計算機を使用することに起因する計算誤差のおかげて最適値が得られる現象に対し、理論的な説明を与えることができた。この結果はまさに当初の研究目的(の一部)を達成するものである。国際学術論文誌に掲載された。 2. 錐線形計画のサブクラスである2次錐計画問題および半正定値計画問題における弱実行不能という退化現象に関して、新しい理論的な知見を与えた。特に、許容性問題の新しい分解方法を提案し、これにより、元問題の許容性判定をより小さな許容性問題に落とし込むことに成功した。この分解手法を用いて、様々な解析を行った。特に、弱実行不能な問題全体に対して新しい観点を与えた。これらの結果は2本の国際学術論文誌に掲載された。 3. 研究の副産物として、Toroidal Grid Graph というグラフ上での競合拡散ゲームに関して、あらゆる場合の純粋ナッシュ均衡を求めた。これにより、Toroidal Grid Graph に関する競合拡散ゲームは完全に解かれたことになる。このゲームに関する研究は、他のグラフの場合などさらなる発展も見込むことができる。この結果は国際学術論文誌に掲載された。 4. 研究の副産物として、畳み込みニューラルネットワークを用いて囲碁の棋力を推定する問題に関して、新しく有効な手法を提案・実験を行なった。この結果は国内の学術論文誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年論文で発見した「多項式最適化問題に対する半正定値緩和問題を解くときに、ソルバーが誤った最適値を出力するのに、それが本来求めたい元問題の最適値である」という現象に関して、その理由を求めることが第1の目標であった。これは2015年に発表した論文によって一応の解決を見た。つまり、計算機による計算で自動的に入って来る誤差が、計算を良い方向へ導く構造があることが示された。ここまでは良い成果が出たが、その次の誤差を積極的に用いてモデリングにつなげる部分は、なかなか難しいところがあり成功したとは言い難い。 一方、錐線形計画の退化に関しては、2次錐計画問題および半正定値計画問題における弱実行不能という退化現象に関して、新しい理論的な知見を与えることができた。特に、許容性問題の新しい分解方法を提案し、これにより、元問題の許容性判定をより小さな許容性問題に落とし込むことに成功した。この分解手法を用いて、様々な解析を行った。特に、弱実行不能な問題全体に対して新しい観点を与えた。これらの結果は2本の国際学術論文誌に掲載された。この面では成果があがっている。 また、Toroidal Grid Graph というグラフ上での競合拡散ゲームに関して、あらゆる場合の純粋ナッシュ均衡を求めることにより完全に解いたことなど、副産物としての研究もかなり進んだ。 以上を総合的に勘案して、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に最終年度であるので記入すべきことはない。ただ、29年度には28年度の研究成果の発表が予定されており、それに繰り越した予算を用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ネットワークに対する錐線形計画の適用について2016年夏に学会発表をしたところ、様々な助言をいただき、秋以降研究が大幅に進展した。新しいモデルに関する理論的保証を証明でき、また、従来のモデルに対する新たな見方を打ちたてることができた。この進展のため、従来計画していた3月の国内学会ではなく、5月に開催されるレベルの高い国際学会で研究内容を発表することができるようになった。この旅費の分を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
5月にカナダのバンクーバーで開催される SIAM Conference on Optimization 2017 に参加することにほぼ全額を用いる。
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備考 |
研究室のページから研究業績などへたどれるようになっている。
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