研究課題
近年、医療分野では遺伝子診断の普及、分子標的治療の開発などにより、疾患概念の細分化が進んでいる。これにより、臨床試験を実施する際に、対象となる被験者数が限られるために、統計学的評価が困難になるという状況が生まれ、今後その傾向はますます高まると推察される。ベイズ流統計学(Bayesian Statistics)は、様々な分野において利用されているが、臨床試験分野での普及はそれほど進んでいない。本研究の目的は、ベイズ流統計学の利点を生かして、疾患データベース等を活用しながら、対象数の限られた疾患に対する小規模臨床試験の新規統計的デザインを開発することである。本研究の目的は、ベイズ流統計学の利点を生かして、疾患データベース等を活用しながら、対象数の限られた疾患に対する小規模臨床試験の新規統計的デザインを開発することである。本研究では、がんの第II相試験でよく用いられる有効性と安全性をモニタリングする単群試験について、中間モニタリング時にベイズ流の予測確率を用いて判断を行う新規デザイン、PSSD(Predictive Sample Size Selection Design)を提案し、医学統計学の専門誌に掲載した。また、バスケット試験(いくつかの層からなる単群試験で抗がん剤の開発に用いられる)のデザインについてのレビュー、医師・研究者向けのベイズ流臨床試験デザインの入門書の執筆(発売は平成29年中頃の予定)、実際の臨床試験への適用(小児がん臨床試験)を行ってきた。さらに、共同研究者によるCTD(Clinical Trial Design)研究会を立ち上げ4回開催した(京都、横浜、東京、京都)。平成29年3月(第4回)の研究会には、香港大学からGuosheng Yin教授を招聘した。
2: おおむね順調に進展している
平成26~27年度には、PSSDの安全性モニタリングへの拡張に関する論文を公表し、ベイズ流デザインを実際の臨床試験にも適用した(小児がんの臨床試験など)。平成28年度は、医師・研究者向けのベイズ流臨床試験デザインの入門書を執筆し、今年発売予定である。
平成29年度はバスケット試験の新規デザインの開発、および中間モニタリングの手法に関する研究を重点的に実施する予定である。また、実際の臨床試験へのベイズ流接近法の適用も予定している。
大学運営、学会運営業務などにより、本研究に十分な時間を割くことが困難であったため。
学会出張などで最新の情報を収集し、研究の整理と推進を行う。また、国内外の共同研究者で立ち上げたCTD(Clinical Trial Design)研究会を定期的に開催し、研究の推進を図る。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Oncotarget
巻: 8 ページ: 22135-22144
doi: 10.18632/oncotarget.14029.
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/biostat/