近年、医療分野では診断技術の進歩、標的治療の開発により、疾患概念の細分化が進んでいる。これにより、臨床試験の被験者数が限られるために、統計学的評価が困難になるという状況が生まれ、今後その傾向はますます高まると推察される。このような状況において、特に探索的臨床試験(主に第I相、第II相)で効率よく医療技術を評価することは大きな意義がある。このような制約のある臨床試験においても何らかの意思決定を行うためには、古典的な方法(主に頻度流の方法)を超えたアプローチが必要である。 平成29年度は、ベイズ流臨床試験デザインの入門書(「なぜベイズを使わないのか!?臨床試験デザインのために」、金芳堂、2017年7月)の発刊を行い、臨床家、統計家、および臨床試験に携わる多くの方にベイズ流の方法を広く知ってもらう機会を与えた。 がんの分子標的薬の第II相単群試験において、がん腫/サブタイプを層とした頻度流/ベイズ流デザインがいくつか提案されている。それらを参考に、より簡便、柔軟かつ効率的なベイズ流の新規試験デザインを提案した(日本臨床試験学会、2018年1月)。また、共同研究者らによるCTD(Clinical Trial Design)研究会を開催し(2017年6月)、2017年7月には、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会において、ベイズ流臨床試験に関するシンポジウムをオーガナイズした。2017年度統計関連学会連合大会(2017年9月)では、ベイズ統計学の企画セッションでベイズ流臨床試験いついて発表を行った。
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