本研究課題では,従来,主にマルコフ確率場により表現されて来た画像の空間相関を,ガウス過程を使って表現することで,画像処理の新しい手法を展開することを目指した.そして,画素の空間相関をガウス過程で表現した,新しい画像分割法を開発し,その改善を進めている. その手法では,まず,擬似EMアルゴリズムを用い,従来手法より高精度な画像分割を実現できることが示された.そして,完全なEMアルゴリズムとすることで,さらなる高性能化を目指したが,実際には数値的な不安定が生じ,性能は擬似EMアルゴリズムを用いた場合をしばしば下回ることが判明した. そこで,EMアルゴリズムを使わず,ベイズ推定の利用について検討を進めた.すなわち,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法,より詳細には,メトロポリス・ヘイスティングス(MH)法により,ガウス過程事前分布の下での関数推定を行うことについて検討を行った.これは,画像分割に限らず,ガウス過程に基づく確率モデルを画像処理に適用する場合に必要となる重要な基礎技術である.そこで問題となるのが,MH法の効率である.ガウス過程事前分布の下での関数推定問題を,関数を離散化したベクトルの推定問題とする場合,その要素間の相関は一般に非常に強いものとなる.そして,そのことは,MH法で生成される候補が,非常に高い割合で棄却されやすいことを意味する.この問題を軽減する方法について研究を進めた.そして,提案分布にある種の局所性を持たせ,状態の更新に空間的な結びつきをより強く反映したものとすることで,効率を改善できることを示した.
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