研究課題/領域番号 |
26330047
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
渡辺 元宗(張元宗) 目白大学, 社会学部, 教授 (40227343)
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研究分担者 |
篠崎 信雄 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (70051886)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制約条件のある母数空間 / 確率優越性 / Pitman Nearness / 一般ベイズ推定量 / 縮小推定量 / 制約条件を満たした最尤推定量 |
研究実績の概要 |
制約条件のある母数空間における推定問題の核心は制約条件のある母数空間の次元と制約条件の本数の問題にあると考えられる。その解明に当たって、特にsimple order、tree order制約がある場合の推定問題は、相関がある場合の議論と深く関わりがあることを認識している。相関がある場合について、制約条件が与えられた時の推定量の改良問題を解明することは、次元数および線形不等式制約条件の本数の問題の解明につながると考えられる。 26年度に、以下の問題を取り組んで来た。 ①2次元正規分布の分散共分散が既知で、母平均に順序制約がある場合の母平均の推定問題:相関がある場合、順序制約を満たす最尤推定量を導いた。確率優越性の評価基準の下で、導いた最尤推定量がHwang,Peddada(1994)、またはPeddada(2005)らが提案した推定量より良くなることを証明した。Pitman nearnessの評価基準の下でも同様な結果が得られた。 ②未知で同分散を持つp(≧3)個の正規変量の非負な正規母平均の同時推定問題:Katz (1961)は分散が既知で、非負な正規母平均の許容的な推定量(非負な平面上の一様分布を仮定したときの一般ベイズ推定量)を提案した。分散が未知で、分散の推定量を代入したような修正したKatz推定量を提案し、これをベースにした縮小推定量が、修正したKatz推定量より良くなる事を証明した。さらに、非負な平面上にガンマ分布を事前分布としたときの一般ベイズ推定量を導いた。導いた一般ベイズ推定量は許容的な推定量であることを明らかにした。それをベースにした縮小推定量を提案、改良を行った。 ③Pitman Nearness評価基準の下で、2つ正規分布の母平均と分散双方に順序制約がある場合の母平均の推定量問題:Pitman Nearness評価基準の有効性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①研究実績概要で記述した2次元正規分布の分散共分散が既知で、母平均に順序制約がある場合の母平均の推定問題について、相関がある場合、順序制約を満たす最尤推定量を導いた。確率優越性の評価基準の下で、導いた最尤推定量がHwang,Peddada(1994)、またはPeddada(2005)らが提案した推定量より良くなることを証明した。Pitman nearnessの評価基準の下でも同様な結果が得られた。一方、母数の線形不等式制約、分散が未知の場合も重要な問題である。この問題を27年度に研究の課題の一つにする。 ②未知で等分散を持つp(≧3)個の正規変量の非負な正規母平均の同時推定問題に対して、現在投稿準備中の状況である。 ③Pitman nearness評価基準の下で、2つの正規分布の母平均と分散、双方に順序制約条件がある場合の母平均の推定において、大きい分散を持つ母平均の推定に対して、従来の推定量を改良することが出来た。しかし、小さい分散を持つ母平均の推定に対して、従来の推定量を改良することができないことを明らかにした。この研究を通じて、Pitmanが提唱したPitman nearness評価基準で得られた結果は確率優越性の評価基準で得られた結果(Chang,Oono,Shinozaki(2012,JSPI))と同等であることを明らかにした。得られた結果をAISMに投稿し、採択された。 ④ある値または順序統計量に縮小するような新しいタイプのp個ポアソン分布の母数の同時推定量の構築、MLEに対する改良のための証明はほほできたが打ち切りタイプの縮小推定量について、MLEを改良するための証明過程において、場合分けが煩雑かつ困難で、研究の進捗はやや遅れる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
p個の非負の正規分布の母平均の線形関数の推定問題に対して、制約条件を満たす最尤推定量(RMLE)が制約条件を無視した不偏推定量(UE)を改良するための必要十分条件(p<5)を明らかにした。さらに、順序制約がある2つのポアソン分布の母平均の線形関数の推定や、順序制約がある2つのガンマ分布の尺度の線形関数の推定において、RMLEがUEを改良するための、係数に関する必要十分条件を与えた。 しかし、正規母平均の推定問題でも、2次元あるいは2本の制約条件の場合については、線形不等式制約条件を守る最尤推定量が制約条件を無視した不偏推定量を改良することが知られているが、3本以上の制約条件がある場合については明確なことはほとんどわかっていない。 次元や線形不等式制約条件の本数に関する問題の解明には相関がある場合での制約された母数の推定に強い関連性があると考えているので、そこで、26年度の研究成果および両者の過去の研究を生かしながら共同研究として、線形不等式制約条件の下での多変量正規分布の平均ベクトルの成分およびそれらの線形関数の推定において、不偏推定量を改良する問題で、問題の次元および線形不等式制約の本数についてより一般的な理論を構築する研究を進めたい。 また、新しいタイプのp個ポアソン分布の母数の同時推定量の研究も同時に行いたい。従来のポアソン母平均の同時推定量は原点に縮小するような推定量が提案されている。データが原点近辺に集中すれば、原点に縮小するような推定量の改良度が大きい。しかし、データが原点から離れると、その改良率は顕著に低下すると予測される。ここで、ある共通の値、あるいは、順序統計量に縮小うるような新しいタイプの推定量、または、打ち切りタイプ縮小推定量を提案、改良となることを導きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理論を検証するため、数値計算によるシミュレーションの必要性が発生したが数値計算を行うための高性能のノートパソコンの購入に検討を要したため。また、27年度に、国際会議に参加、研究成果を発表するための費用も必要なので、27年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
1)2015年9月23日、24日に台湾台北で、2015ANQ(Asian Network for Quality)国際会議に参加、発表する予定である。尚、研究のため、米国、NJ州州立Rutgers大学統計学科に訪問し、共同研究を行うための旅費にする。 2)2015年12月、ERCIM2015(The 8th international conference of ERCIM WG on computational and methodological statistics)が開催され、研究発表および研究者との研究交流のための旅費にする。 3)ノートパソコンの購入費用にする。
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