研究実績の概要 |
母数空間の次元数と線形不等式制約条件の本数による推定量改良可能性の問題の解明は本研究の主目的である。線形不等式制約が2本ある場合の平均の線形関数の推定に関しては、制約条件を満たす最尤推定量(RMLE)が常に不偏推定量(UB)を改良することが示されている(Rueda & Salvador(1995))。独立な非負の正規母平均の線形関数の推定問題に関しては、RMLEがUBを常に改良するための必要十分条件は、次元数が4以下であることが示されている(Shinozaki & Chang(1999)、Fernandez et al.(2000)、Kubokawa et al.(2011,2012))。しかし、制約本数が3本以上の場合、あるいは、一般の線形不等式制約がある場合については十分には議論されていない。 特にsimple order、tree order制約がある場合、母平均の線形関数の推定問題は相関がある場合の議論さらには同時推定の議論とも深く関わりがあることを認識し、下記のテーマについて研究を進め、以下のような研究成果が得られた。 1)2次元正規分布の分散共分散行列が既知で、母平均に順序制約がある場合の母平均の推定問題:平均2乗誤差、確率優越性およびPitman nearnessの基準の下で、RMLEがHwang, Peddada(1994)またはPeddada et al.(2005)が提案した推定量より優れていることを明らかにし、2017年にStatistics誌に発表した。 2)分散の値が等しいが未知のときの、非負な正規母平均の同時推定問題:Katz(1961)が提案した単独ならば許容的な推定量に対して、未知の分散にその不偏推定量を代入して得られる推定量に基づいた縮小推定量を提案し、改良になるための十分条件を導いた。その研究成果は2017年にStatistics and Probability Letters誌に掲載された。 3)2つの正規母平均と分散の双方に順序制約がある場合の母平均の推定問題を取り上げ、Pitman nearness評価基準の下での改良可能性について明らかにし、2015年にAnn. Inst. Statist. Math.誌に発表した。
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