本年度は、前年度に行った検討から、historical knowledge(分析対象の医薬品等の薬物動態に関して過去の研究で得られた既存の知識)を利用する利点が強調されたことに基づき、limited sampling design(限定されたサンプル取得計画)によるデータの持つ情報の限界に対して、historical knowledgeを利用するベイズ流のアプローチを試み、既存の知見と新たに得たデータを統合して新たな知見を得るという方法論の成功例を示すことができた。 前年度に行った研究を本年度にまとめChem-Bio Informatics Journal誌に掲載された。また、本年度に行った研究の成果はCurrent Therapeutic Research誌に受理された。 本年度の成果は次のよう解釈できる。すなわち、母集団薬物動態モデリングにおいて被験者背景を共変量としてモデルに取り込むかどうかを尤度比検定により判断する際に、新たに取得されたlimited sampling デザインによるデータのみを解析対象とした場合には検出力が不足するが、既存の知見を利用したベイズ流の推定を行うと共変量の影響を検出できることを意味する。 これを発展させると、既存の知見を利用するベイズ流の解析を予定して研究計画を立てる場合には必要症例数を減らせると考えることができるが、年度内での成果は得られていない。研究のさらなる継続が必要である。
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