研究課題/領域番号 |
26330055
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
西川 正子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (50373395)
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研究分担者 |
筒井 孝子 兵庫県立大学, 経営研究科, 教授 (20300923)
大夛賀 政昭 国立保健医療科学院, 医療・福祉サービス研究部, 研究員 (90619115)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 医薬生物統計 / 臨床試験 |
研究実績の概要 |
最適な治療方法を確立するためには、その有効性・安全性を確認する信頼性の高い臨床試験の開発が必須である。そのためこれまで、医学的な重要性に基づいて治療方法の有効性と安全性の両方を同時に考慮して精度よく評価する検定方法等を開発してきた。そこでは、競合リスクの影響は無視できると仮定された。しかし、臨床試験現場では無視できない競合リスクが存在することも多い。例えば、死因間の独立性を仮定して生存時間解析を行った文献が多く見受けられるが、実際の死因は互いに独立とはいえない。また、治療においては、入院期間の分布を正しく評価する必要があるが、退院理由は軽快とは限らず、悪化や死亡もありこれらは競合リスクとなる。退院理由を無視して入院期間のみを評価するのは、本来の意図からはずれた評価になりかねない危険がある。そこで本研究では、このような競合リスクが存在する場合の高精度な評価法を開発する。 平成26年度は、1.従来の解析手法の種々の問題点を解決するために、現在用いられているハザードや累積発現率の検定方法とモデル化、情報のあるセンサーのモデル等の解析法をさらに詳細に分析した。Lunn-McNeilのモデルについて検討を行い、結果を国際学会で報告した。 2.治療のための入院から退院までの期間(入院期間)の評価において、現在用いられている評価方法を調査した。退院理由が競合リスクになることを考慮した研究報告は皆無であった。 3.実際の臨床試験環境において、競合リスクが存在する状況(試験デザインやエンドポイント等)についての最新情報を、文献や医学系の国内学会で調査した。 4.複合エンドポイントの各成分への治療の影響が同じ方向であるか(脳卒中を減らす効果があって、同時に心筋梗塞も減らす効果があるか)についての検定方法に関して、検出力の高い調整方法を検討した。調整方法についての理論がほぼできあがった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周辺ハザードの比較に一般的に用いられているログランク検定を用いた場合について、ブートストラップ法を適用することによる調整についてsimulationデザインおよび解析プログラムの検討を行った。解析プログラムがほぼできあがった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果をもとに以下のような研究プログラムを実施する。 周辺ハザードの比較に一般的に用いられているログランク検定を用いた場合について、ブートストラップ法を適用することによる調整についてsimulation解析プログラムを作成する。また、注目するイベントおよび競合リスク要因について「情報を持つセンサー」を考えた研究、および多重代入法を応用して従来の問題点の改良を検討する。改良法について、その構成の合理性について検討し、改良を行うとともに、考案した方法の理論に基づき解析プログラムを開発する。 臨床試験において、血糖値や血圧値などの経時的データが何らかの理由により完全には観測できない場合の評価方法が昨今、大きな問題となっている。この状況に対してイベントを「軽快・改善」として競合リスク的な観点を応用して偏りのないデザインと評価方法を検討する。国際学会等で検討結果を報告する。治療のための入院から退院までの期間(入院期間)の医療の評価において、退院理由が競合リスクになることを考慮した研究報告は皆無であったので、退院理由が競合リスクになることを考慮した方法が有用であることやその解析方法について当該分野の専門家にも知識を広める。改良法のテスト用および医療評価分野への競合リスク解析方法の例題として、入手可能な入院期間のデータについて調査を行う。 応用に関連する治療領域や関連する解析方法・試験デザインについての最新の情報を国内外の学会に参加するなどして適宜収集・意見交換し、デザインや評価方法の改良に反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が所属研究機関を異動したことにより、国際学会参加の際に新しい所属研究機関から支給される海外渡航旅費補助を使用することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの検討結果に基づいた改良方法の解析プログラムを作成する。その性能をsimulationにより検討する。プログラム作成にかかわる消耗品(その他の費目)を購入する。様々なパラメータの組み合わせをテストする必要があり、プログラム作成、結果や関連資料の整理には研究補助者の協力を得るので謝金が必要。 この分野の発展は非常に速いので、応用に関連する治療領域や関連する解析方法・試験デザインについての最新の情報を継続的に収集するために書籍(物品費)購入や文献調査を行う。文献調査と資料の整理には研究補助者の協力を得るので謝金が必要。 情報収集・意見交換のために国内学会に参加する旅費が必要。また、本研究のこれまでの結果について学会報告などを行う国内・海外旅費が必要である。
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