研究課題/領域番号 |
26330057
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
黒川 敦 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (80610592)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 三次元集積回路 / 貫通シリコンビア / クロック分配 / 電源分配 / 熱解析 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、三次元集積回路の設計技術の研究・開発として、1)積層配線間の高速容量抽出、2)積層信号の遅延とクロストークノイズのモデリング、3)クロック分配方法、4)電源分配方法、5)熱解析について実施した。成果の概要は次の通りである。1)インダクタンス逆行列からTSV間容量を高速に抽出するための最適な行列サイズを提案した。電気学会東北支部優秀論文賞を受賞した。2)貫通シリコンビアを用いた三次元集積回路における基板コンタクト無し、細粒度基板コンタクト有り、粗粒度基板コンタクト有りの場合の伝搬遅延とクロストークノイズの式を提案した。さらに、複数規則的配置における基板コンタクト無し、細粒度基板コンタクト有り、粗粒度基板コンタクト有りの場合の容量式、及びコネクタ間の容量式も提案した。3)積層チップのクロック分配ネットワークとして、複数のソースバッファを用いたクロック分配方法を提示した。この方法の利点はクロックソース以外のチップは現在最も良く使われているバッファ付きクロックツリー合成のようなシングルチップ設計と同じ方法で、積層チップのクロック分配網を設計できることである。4)三次元集積回路の電源ノイズ解析用の回路モデルを提示し、構造や電気的パラメータの変化に対する電源電圧降下の解析結果、及び最適な電源用TSVの間隔を提示した。5)熱伝導解析ソフトを用いて、積層数やチップサイズ、消費電力、各材質の厚みや熱伝導率、ヒートシンク等様々な条件におけるチップの最高温度の違いについて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成27年度はクロックスキューを削減するクロック分配、及び電源分配に関する技術の開発である。クロック分配については積層チップ向けの新たな手法を提案することができた。電源分配については設計初期段階の高速解析方法を提案することができた。しかし電源分配についてはまだより精度の高いモデル化が必要であり、平成28年度に継続して研究する。また、平成28年度に予定していた高速寄生抽出方法と熱解析関連は既に研究を開始しており、成果を学会にて発表している。 全体として、ほぼ計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに、三次元集積回路の電源電圧降下や熱解析を実施した。しかし、電源分配のモデル化が不十分であり、精度を上げるためにインピーダンスとして近い等価回路が得られるモデルの開発に取り組む。また、熱解析により得られた知見に基づいて、熱回避のための対策技術の開発に取り組む。 最終年度として、熱対策や電源電圧解析等に関する研究成果の公表、及び本研究を遂行することによって、三次元集積回路の設計で新たにわかった課題の整理と解決策の検討も実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表として、学会への出張費として使用予定であったが、端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表として、学会への出張旅費に充てる計画である。
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