研究課題/領域番号 |
26330064
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武内 良典 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70242245)
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研究分担者 |
今井 正治 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50126926)
劉 載勲 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70726976)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチプロセッサ・システム / タスク割当 / 高信頼性 |
研究実績の概要 |
近年,電子システムの高信頼度化への要求が増してきている.電子システムの高信頼度化の実現方法としては,システムレベルから回路レベルまで,各レベルにおける方法が提案されているが,本研究では,今後の高性能システムを実現するために広く用いられると期待されているマルチプロセッサ・システムを対象としてタスク割当ておよびスケジューリング手法によって高信頼度化を実現するための研究を進めている.今後,電子システムは,医療,ヘルスケアなどの分野への応用が期待されており,それらの分野では,システムの温度上昇,経年劣化を避けるために低電圧での駆動が要求される.しかしながら,低電圧でのシステムの駆動は回路の動作による電流の増減によってさえも,電源電圧の変動に影響を与えてしまい,システムが正常に動作しなくなってしまう可能性が発生する.本研究では,マルチプロセッサ・システムを低電圧で動作させるときに,タスク割当て,スケジューリング手法を用いて,システムの高信頼度化を実現する方法を提案する. 平成26年度は,マルチプロセッサ・システム上で,タスク割当ておよびスケジューリングの違いによる信頼性の変化を確認した.まず,ホモジーニアス・マルチプロセッサシステムにより構成されるプロセッサ・システムの電源電圧変動モデルの検討を行った.特に単一システムバスのマルチプロセッサ・システムに対して,構築した電源電圧変動モデルを適用し,それらへのタスク割り当ての電源電圧変動に対する影響を分析した.分析の結果,タスク割当および割り当てられたタスクのスケジューリングを行うことで,システム全体の消費電流をコントロールできることが知られ,消費する電流をコントロールすることで高信頼度化の可能性を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の目標は,マルチプロセッサ・システムの電源電圧変動モデルの構築,対象システムへのタスク割当ての影響の評価,最適タスク割当て手法の定式化,アプリケーションによる評価を進めることであった.最も基本的な単一システムバスのマルチプロセッサ・システムの電源電圧変動モデル検討を行い,他のマルチプロセッサ・システム上についての検討を引き続き進めている.アプリケーションとしては,DSPstoneを用いた,依存関係の無い複数タスクをマルチプロセッサに割り当てる場合を検討した.計算機実験の結果から,タスクの割当により,システムで消費される電流に大きな変化が現れ,最大最小電流の幅が変化することから,タスク割当てスケジューリングが電源変動に大きく影響する可能性があることが知られた.これは,研究の方向性が正しいことが確かめられた大きな成果であった.実験では,まず,マルチプロセッサの個々のプロセッサで実行される命令に着目し,プロセッサ毎に実行される命令で消費される電流を計算した.その後,マルチプロセッサ・システム上では,全体としては同時に複数の命令が実行されることから,同時に発行される命令により消費されるシステム全体の電力を計算し,システムを高信頼度化するために,電流制約下で,タスクの割当および割当後の命令スケジューリングを行った.その結果,タスクの割当により,最大最小電流に大きな変化が現れ,タスク割当が電源変動に大きく影響する可能性があることが知られた.この結果を活用し,アプリケーションの実時間制約下での電流制約最適化,電流制約最適化での実行時間最小化などの最適タスク割当手法の検討を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度まで行った研究の成果を踏まえ,次の研究を進める.1. NoCベースのマルチプロセッサ・システムの電源電圧変動モデルの検討,2. クラスタ型のマルチプロセッサ・システムの電源電圧変動モデルの検討,3. 最適タスク割当て,スケジューリング手法の定式化である. これまでに,基本的な単一システムバスのマルチプロセッサ・システムの電源電圧変動モデル検討を終えているが,他のマルチプロセッサ・システムについての検討を引き続き進める.検討結果をまとめ,各種マルチプロセッサ・システムの電源電圧変動を抑え,高信頼度化を実現するための知見をまとめる.一方,単一システムバスのマルチプロセッサ・システムにおけるアプリケーションの実時間制約下での電流制約最適化,電流制約最適化での実行時間最小化などの最適タスク割当手法の最適タスク割当,スケジューリングの定式化を行う.その後,他のマルチプロセッサ・システムに対して,手法の拡張を行う.また,成果を対外的に発表していく予定である. さらに,分析結果をもとに,電源電圧の変動を一定以下に抑え,アプリケーションの消費電力量を最小化するタスク割当手法を提案する.以降は,検討したタスク割当手法の評価,改良を行うとともに,対象をヘテロジーニアス・マルチプロセッサ・システムへと拡張し,電源電圧変動を考慮した高信頼性を実現するタスク割当手法を完成させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
必要に応じて研究費を執行したが,当初の見込み額と執行額が異なっていたため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に特に変更は無いので,前年度の研究費も含め,予定通りの研究を実施していく.
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