研究課題/領域番号 |
26330084
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大下 福仁 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362650)
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研究分担者 |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
角川 裕次 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80253110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | モバイルエージェント / 分散システム / アルゴリズム / 自己安定 |
研究実績の概要 |
本研究では、インターネット上に存在する様々な計算環境を、モバイルエージェントを用いて統合的に利用可能とするシステムの開発を目標とする。平成28年度は、モバイルエージェントシステムの信頼性・効率性を高めるアルゴリズムを提案した。具体的な成果は以下の通りである。 (a) ビザンチン故障に耐性をもつモバイルエージェント集合アルゴリズム:大規模システムではモバイルエージェントがソフトウェアの不具合やクラッキングにより、想定外の動作を引き起こす可能性がある。本研究では、そのようなエージェントをビザンチンエージェントと定義し、ビザンチンエージェントが存在しても正常エージェントを一ノードに効率よく集合させるアルゴリズムを提案した。これにより、正常エージェント間で情報の共有やタスクの分配を実現することができ、システムの信頼性・効率性を高めることができる。また、本アルゴリズムは、従来の分散システムに対するアルゴリズムをシミュレートすることで、ビザンチンエージェントに対する耐性・効率性を実現している。そのため、多数提案されている従来のアルゴリズムを利用することで、集合アルゴリズムに限らず、様々なアルゴリズムの開発に応用できる。 (b) 自己安定1-極大マッチングアルゴリズム:モバイルエージェントの信頼性・効率性を高めるには、その基盤である分散システムの信頼性・効率性を高めることも重要である。本研究では、分散システムにおいて、効率的な自己安定1-極大マッチングアルゴリズムを提案した。本アルゴリズムは自己安定性という一時故障に対する高い耐性(信頼性)をもち、また既存アルゴリズムより効率的に1-極大マッチングを構成することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、申請書に記載した研究計画のうち、1.タスクを適切な計算環境に割り当てるアルゴリズムの開発と3.信頼性の高いエージェントアルゴリズムの開発に関する研究を実施した。 1.については、大きな進展がなく、研究発表に至っていない。 3.については、ビザンチンエージェントに対する耐性をもつ効率的な集合アルゴリズムを提案した。本アルゴリズムの特徴は、従来の分散システムに対するアルゴリズムをシミュレートする一般的な手法を提案して、それを用いてモバイルエージェントにおいてビザンチンエージェントへの耐性、効率性を実現している点にある。そのため、集合アルゴリズム以外への適用も可能であり、さまざまなアルゴリズムの開発を期待できる。また、自己安定1-極大マッチングアルゴリズムなど、エージェントの基盤となる分散システムの信頼性を上げる手法も提案している。 また、上記のアルゴリズムは、信頼性だけでなく効率性に関しても優れた手法である。そのため、研究計画のうちの2.移動コストの小さいエージェントアルゴリズムの開発に対する成果でもある。 よって、1.が若干遅れているものの、2.3.に対して大きな進展があったことから、研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、引き続き上記の1.と3.に取り組み、加えて4.計算環境を統合するエージェントシステムの試作を実施する。 1.タスク割り当てアルゴリズムの開発:現在、計算環境が均一な環境において、エージェントを均一配置することでシステム内にタスクを割り当てるアルゴリズムを実現している。これを、不均一な環境に対して拡張することで、アルゴリズムの開発を試みる。 3.信頼性の高いエージェントアルゴリズムの開発:自己安定性を実現したアルゴリズムの実現、ビザンチンエージェント耐性をもつアルゴリズムの実現を並行して実施する。前者に関しては、自己安定性に関して著名な研究者であるネバダ大学ラスベガス校のAjoy K. Datta教授を訪問し、共同研究を実施する。後者に関しては、平成28年度に提案したシミュレーション手法を利用して、さまざまなアルゴリズムを開発する。 4.エージェントシステムの試作:ワークステーションを購入し、システムを試作する。本研究で開発した様々なアルゴリズムを実装し、実機上での性能を計測する。それにより、アルゴリズムの性能の最適化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中にネバダ大学ラスベガス校のAjoy K. Datta教授を約2か月訪問し、本課題に関する国際共同研究を進める予定であったが、諸事情により平成29年度へ延期することになった。そのため、国際共同研究に使用する予定であった予算が平成29年度へ繰り越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、平成29年度中にネバダ大学ラスベガス校を訪問して国際共同研究を進めるために、次年度繰越金を使用する。平成29年度分として請求済みの助成金は、当初の予定通り、ワークステーションの購入、成果発表のための旅費として使用する。
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