研究課題/領域番号 |
26330087
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
天野 浩文 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (80231992)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遠隔バックアップ / ストレージ仮想化 / 秘密分散法 / iSCSI / オンデマンド再構築 / バックグラウンド再構築 |
研究実績の概要 |
大規模災害の際に重要な情報が失われるのを回避するためには,遠隔地にバックアップデータを保存することが不可欠である.しかし,個々の組織が個別に遠隔地のバックアップ先を確保することは容易でないため,同じようなミッションを持ち広域に分散して立地する複数の組織が相互にバックアップを保持することが有効である.ただし,バックアップの保存先で秘密が漏洩することも防止しなければならない.本課題代表者のこれまでの研究により,ストレージ仮想化技術(iSCSI)を活用すると多種多様なOSやアプリケーションを変更することなく利用可能なバックアップシステムが実現できること,および,秘密分散法を用いると複数の組織が互いの秘密を保持したまま安全にバックアップが相互保持できることがわかっている. 本研究では,秘密分散法を用いて保存されたバックアップデータが遠隔地に存在する状況で,安全かつ迅速にサービスを再開させるために,失われた原データ全体を復元せずともサービスを再開させることのできる遠隔バックアップ相互保持システムを開発することを目指している. これまでの研究により,失われたボリュームへのアクセス要求が発生したときに遠隔バックアップから当該ブロックを復元するオンデマンド再構築機能,および,オンデマンド再構築による負荷が発生していない時間を利用して未復旧のブロックを順次復元していくバックグラウンド再構築機能の設計と実装を終えている. 平成28年度には,オンデマンド再構築機能,バックグラウンド再構築機能,ならびに,それらの間の相互排除機構の動作の検証を継続した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は,前年度までに試作した遠隔バックアップ相互保持システムの機能の検証を行い,基本的な動作確認は終了した.しかし,代表者が従事するスーパーコンピュータ調達手続きが遅延し当初の想定よりも長期間に渡ってこの業務を継続しなければならなくなったために本研究を遂行する時間が計画よりも減少したこと,および,高負荷時の挙動についてはさらに詳細な実験を行って確認する必要のあることが判明したこと,の2つの理由から,研究期間を当初計画の3年間から1年延長して最終成果をまとめることとした.このため,本課題の研究は当初計画よりもやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの成果をもとに,安全かつ迅速なデータ復旧を可能にする遠隔バックアップ相互保持システムの高負荷時の挙動に関する機能検証,性能評価,および改良を行う. 性能評価にあたっては,通信遅延時間などのパラメータを変化させて多様な環境における性能の評価を行うとともに,人工的に合成した単純なアクセス負荷だけでなく,実際のディスクに対するアクセストレースを再現したような負荷に対する計測を行うことで,現実的な使用環境における性能も計測する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が従事するスーパーコンピュータ調達手続きが遅延し当初の想定よりも長期間に渡ってこの業務を継続しなければならなくなったために本研究を遂行する時間が計画よりも減少したこと,および,高負荷時の挙動についてはさらに詳細な実験を行って確認する必要のあることが判明したこと,の2つの理由から,研究期間を当初計画の3年間から1年延長して最終成果をまとめることとした.このため,平成28年度に使用しなかった残額を平成29年度に使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
高負荷時のシステムの挙動の検証や多様なアクセス負荷パターンに対する性能評価を行うための実験機材の購入,成果発表のための旅費・論文投稿料などに使用する予定である.
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