研究課題/領域番号 |
26330093
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
花川 典子 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (60351673)
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研究分担者 |
尾花 将輝 大阪工業大学, 情報科学部, 助手 (00710071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メトリクス / インフラストラクチャ / ソフトウェア / 障害 / 設計書 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,提案したメトリクスの有効性の検証を行う.まず,検証を行うために,開発終了後3年の運用稼動実績のあるターゲットプロジェクトを設定した.インフラとソフトの設計ドキュメントより提案するメトリクス値を計測し,さらに障害管理表より障害の内容を分析した.①メトリクス値とインフラ設定ミス起因のシステム障害件数(システム全体)の関係は主だった傾向や相関を抽出することができなかった.②障害が発生した特定機器のメトリクス値は高い傾向にあることがわかった.つまり,頻繁に設定ミスによる障害が発生するインフラ機器とその周辺のソフトはメトリクス値が高いことがわかった. ①メトリクス値と障害件数の関係が明確にできなかった原因のひとつに,障害が複数の機器やソフトにまたがって発生するケースや,設計書の作り方によってメトリクス値が非常に大きくなるケースがあった.したがって,提案メトリクスを精査して,設計書の作り方で影響されないメトリクスを選択し,かつ,設計書の汎化方法を提案し,意図したメトリクス値が計測できるようにした. また,ターゲットプロジェクトの設計書でメトリクスを計測する場合,手動計測は量的問題があり不可能であった.したがって,設計書から提案メトリクス値を計測するツールと障害管理表との関係を分析支援するツールを表計算ソフト上で作成した.これによって,多数の設計書から構成されるターゲットプロジェクトが分析できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メトリクスの提案をすでに行ったが,実際のターゲットプロジェクトで計測し評価することで提案メトリクスの精査をした.昨年度までは提案メトリクスは3つの観点で計測されていたが,そのうちのひとつの「凝集性」メトリクスはインフラ関係の設計書では計測が困難であることがわかった.つまり,凝集性と定義した観点が設計書から抽出できなかった.そこで,残りの2つの観点に絞り込んであたらしい提案メトリクスとし,かつ,パラメータをチューニングすることで,②問題のあるインフラ機器の特定に役立つメトリクスへ進化することができた. また,ターゲットプロジェクトの多量の設計書を分析するためのツールを開発することで,パラメータチューニングや障害との関係の分析が容易となった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度のターゲットプロジェクトでの検証では,②提案メトリクスが問題のある機器の特定の支援になることがわかった.ただし,①提案メトリクスとシステム全体の品質との関係は明確にはならなかった. そこで,今後は以下の観点で研究を推進する. (1) ターゲットプロジェクトを広げる. 本研究では設計時の設計書のミスが重要となる.つまり,終了したプロジェクトでは設計時に誤った値を記述した設計書は,後のテスト等ですでに修正されている.したがって,正確に設計時のミスが検出できない.そこで,現在,設計途上であるプロジェクトをターゲットプロジェクトとする必要がある. (2)設計書の汎化 研究を進めていると,設計書内に同じ設計項目が何度も出現した.これは設計書をコピーして作成したからと考えられる.その重複設計項目のためにメトリクス値が大きく影響されて異常値を示した.そこで,ある程度手動で重複設計項目を共通化したが,手作業では限界がある.したがって,コードクローン技術を応用して同一設計項目が書かれている箇所を特定する「デザインシートクローン」を検出する方法を考える必要がある.そして,クローン(重複)部分を汎化することで,メトリクス値に影響を与えない設計書にすることが必要となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年11月に論文誌に投稿し,審査中であった.2016年3月までに審査結果が確定し論文誌投稿費用が発生すると予想していたため,論文誌投稿費用を準備していた.しかし,審査が長引いて2016年3月31日の時点では条件付採録となり,最終審査結果が不明であった.したがって,論文投稿費用がそのまま残された.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年6月には最終審査結果が明確となる予定である.採録された場合の論文誌投稿費用として使用する予定である.
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