データの相互変換は情報システムにおける重要な操作であるが、双方向変換は、その変換をこえて双方向に更新を伝播させることができるため、設計から実装までの工程をモデル変換で実現するモデル駆動開発に於いて、下流での修正の上流への伝播(=再実装への不具合波及抑止) を実現する枠組として期待されている。 本研究は、代表者が双方向グラフ変換言語をモデル(=グラフ)駆動開発に応用してきた過程で直面した実用上の問題を(1) 他の枠組への組み込み、(2) 他のシステムと対等で相補的な統合、(3) 双方向変換システム自身への他のシステムの組み込みに必要な相互運用性という三つの相互運用性の切口で捉え、扱うグラフの表現力の向上、変換の性能や能力の向上等を通して、既存の双方向変換を含む、より明快で強力な枠組を提案するものである。 本年度は、(2)において、性質の異なる双方向変換を相互運用する際の注意点、具体的には、性質の強い双方向変換と弱い双方向変換を合成して弱い双方向変換を構成するには、接続部分により強い制約が求められることを示した。 また、部分翻訳に基づく部分双方向化のための翻訳機構を系統的に構築する手法を提案した。具体的には、翻訳元と翻訳先の言語が加法性(変換の構文の異なる階層における言語要素の列を短縮することにより変換結果が厳密に小さくなるという性質)を持つ場合、翻訳器自身もそのような言語構造にしたがって自然に漸進的に構築できることを示し、プログラミングに関する研究会で発表した。 更に、共同研究において、編集操作を双方向変換で定義する手法をコードクローン間の選択的変更伝搬に応用する手法を提案した。具体的には、複製元を中心とした恒等双方向変換のco-targetial合成で複製間を関係づけた上、他のクローンに伝搬させたい変更は双方向変換により伝搬させ、そうでない場合は変更を表現する双方向変換を挿入する。
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