研究課題/領域番号 |
26330103
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
内藤 克浩 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (80378314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 物理層セキュリティ / 伝送路特性 / 暗号 / プレ等化処理 |
研究実績の概要 |
無線ネットワークの普及に伴い、無線ネットワーク上で交換されるデジタル情報を守るだけではなく、任意の場所で受信可能な無線信号自体のセキュリティに対する注目も近年増しており、業務用途で利用するビルなどでは、電波を遮蔽可能なフィルムなどを用いて、ビルから漏洩する無線信号を防ぐなどの対策が始められている。しかしながら、人が頻繁に移動するビル内の各部屋レベルで、無線信号の漏洩を防ぐことは困難であり、アナログ信号レベルでセキュリティ対策をすることが望まれている。本研究開発では、一般に無線端末の場所が異なれば、無線端末間の伝送路特性が異なることに着目し、アナログ信号レベルのセキュリティ対策を目指して研究開発を行う。 平成27年度の開発では、平成26年度に基礎研究を開始した無線伝送路特性を暗号鍵として利用するアナログ暗号方式について、理論解析的側面からの提案方式の特徴解析を行うとともに、複数の無線伝送路特性モデルにおける提案方式の有効性をシミュレーション評価により検証を行った。評価結果より、提案方式のアナログ暗号方式は、一般的な無線伝送路特性モデルを想定した場合においても、所望無線端末間の通信信頼性を劣化させることなく、盗聴端末の受信処理にエラーを発生させ、無線端末間で交換されるデジタル情報を保護可能であることを明らかにした。また、平成28年度に向けた準備として、提案方式をソフトウェア無線機器であるUSRP上に実装するための事前検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、無線信号をアナログレベルで利用する新たな無線ネットワーク用セキュリティ技術を開発することであり、端末間の伝送路特性が異なることに着目する。 平成26・27年度の研究進捗状況として、無線伝送路特性は無線端末間の位置が異なる場合には独立して変化することから、所望無線端末間の無線伝送路特性を測定後、推定無線伝送路特性に合わせて送信信号をプレ等化した信号を送信する方式を提案してきた。プレ等化された信号は、所望無線伝送路特性を通過した場合にのみ正常に復調処理が実現できる一方で、その他の無線伝送路特性を通過した場合には、復調処理に失敗することにより、デジタル情報を保護可能である。提案方式に対する評価として、理論解析、シミュレーションによる評価を終わらせており、当初予定されていたソフトウェア無線機器を利用した実証実験による評価も平成28年度に実施可能と考えている。 以上のような状況から、本研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までの研究開発において、無線通信一般における無線伝送路特性の調査を行い、無線伝送路特性は送受信端末の位置が変化するだけで、その特性は大きく変化することが知られていることを再確認した。また、無線伝送路の独立性に着目することにより、所望端末間でのみ無線信号を復調可能となるアナログセキュリティを実現するための基礎評価を終えることができた。また、平成27年度後半には、平成28年度の実証実験に向けて、ソフトウェア無線機器であるUSRPを利用してOFDM信号を送受信する基礎実装を終えている。 平成28年度の研究開発では、提案方式の無線伝送路特性に応じてプレ等化を行う方式が、実際の無線通信デバイスでも正常に動作するのかを検証する。これは、プレ等化処理により、送信信号のダイナミックレンジが大きくなることが予想されるためである。 また、無線伝送路特性は、送受信端末の位置が電波の半波長程度変化すれば、ほぼ独立になると一般には言われている。一方、本研究では無線LANをはじめとした比較的通信距離が短い環境での利用も想定されるため、より現実的な環境においても、無線伝送路の独立性を担保可能であるのかどうか、実証実験を行い、提案方式の有効性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
提案方式に関する国際会議発表を目指して投稿をしていたところ、2016年4月の国際会議に採録されたため、国際会議に関する旅費及び実験機器に関する費用を次年度に計上する。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年4月に米国・サンフランシスコで開催されるIEEE INFOCOM 2016 WORKSHOPにて提案方式に関する発表を行う際の旅費及び参加費として利用する。 また、ソフトウェア無線を利用する実証実験機器の関連機器の購入として利用する。
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