無線センサネットワーク(WSN)は,各種のモニタリングを通して,社会生活の向上に貢献し得る様々な応用が考えられ,社会の安全や安心及び生活における快適性やゆとりの向上,並びに生産や業務の効率化が期待されている.本研究では,WSNの多数のセンサノードに対して,待機電力をほぼゼロにし,かつ無駄な起動や事象の取りこぼしを防止できるシステムの提供を目的とする.その為に,事象発生によるセンサの発電(環境発電)を用いたノードの起動と,二次電池による高度な信号処理・通信制御を組み合わせたWSN による世界初かつ日本発のハイブリッドな電源管理手法をハードウェアにより実現する. 提案センサノードの試作機を開発し,実際に起動用センサによって無電力状態から起動したセンサノードが,遅延なくセンシングデータを無線送信できるか明らかにした.提案センサノードは起動から約80msで無線送信でき,多くの応用において,その起動時間は無視できる程度であることがわかった. 提案センサノードのバッテリ寿命を見積もるために,その動作特性を考慮して,従来からのバッテリ寿命の見積もり法を拡張した.試作機で得られた各種実パラメタ用いて従来ノードと比較した結果,提案ノードは一日当たり100回の起動では50倍,1000回では6倍のバッテリ寿命を達成できることがわかった. 提案センサノードが実際に各種応用にどのように適用でき,どのように役立てるかを検証するために,2つの応用に対する適用実験を行った.一つが無線ドアモニタリングシステムであり,一方が無線火災警報器である.双方とも,WSN上で所望の動作を正しく実現できることを確認した.
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