研究実績の概要 |
本研究では,インターネット接続環境の整備が遅れている地域や,低コストな通信基盤の需要がある地域で遅延耐性ネットワーク(DTN)が利用されやすくなるように,DTNの経路制御技術について研究している. 本年度は,あらかじめ定めた予定に従う周期的な接触として,大学生が各自の時間割に沿って講義や実験に出席する場合を扱う.各学生がすべての履修科目に出席し,講義等が行われる各教室で学生同士が接触すると仮定し,同一科目を履修する学生がその科目の開講曜日と時限に接触するとみなす.分析対象の学生数は7千名強,科目数は2千科目強,ある一学期を分析した.分析の結果,全学生は11の連結成分に分かれ,もっとも学生数の多い連結成分(主クラスタと呼ぶ)に学生の95%が含まれた.学生間での情報流通が各教室でのみ行われると仮定しても,23程度の講義で情報発信すれば1週間以内に主クラスタの全学生に情報が伝わることや,その日の最初の講義で情報発信した場合に,その日のうちに1,800名程度(中央値)に情報が伝わることなどが明らかになった.日常的な大学生間の接触による情報拡散の可能性について部分的にではあるが明らかにできたと考える. また,周辺の研究として,無線マルチホップネットワークで用いられる最適化リンク状態経路制御プロトコル(optimized link state routing protocol,OLSR)について,マルチポイントリレー(multipoint relay)の選択方法を提案した.マルチポイントリレーは,各端末が周辺端末の一部を選択したもので,OLSRで経路制御パケットを中継する端末の選択に用いられる.従来は,マルチポイントリレーの選択を各端末が独立に行っていたのに対して,提案手法では,各端末が周辺端末と似通った選択をすることで,経路制御パケットの中継回数が削減できることを計算機シミュレーションで確認した.
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