研究実績の概要 |
本研究では,インターネット接続環境の整備が遅れている地域や,低コストな通信基盤の需要がある地域に遅延耐性ネットワーク(DTN)の導入を促進すべく,DTNの経路制御技術を研究した.最終年度は,配信時刻予想について検討し,準計画的接触モデルを提案した.このモデルによって,時間によって変化する習慣的な接触端末群を状態遷移モデルで表現する方法を明らかにした.また,実装例を構築すべくiOS上のアプリケーションを開発することで,市販スマートフォンを使って遅延耐性ネットワークが実現できることを確認した.AirDropでも用いられる複数ピア接続フレームワークを利用し,BluetoothあるいはWi-Fiで接続した端末間でメッセージを交換する.送信メッセージに宛先と送信データを格納することで,中継スマートフォンを経由したメッセージ伝送できるアプリケーションを作成した.送信データは写真とした. 上記に加え,研究期間全体を通じて以下のことを明らかにした.1) あらかじめ定められた予定に従い周期的に移動するバスや電車のような移動体(メッセージフェリーと呼ぶ)を使ったメッセージ運搬の場合であっても,送信時刻と移動周期とずれによって遅延時間にばらつきが生じること.2) あらかじめ定めた予定に従う周期的な接触として大学生が各自の時間割に沿った行動を想定し,メッセージの到達性を調査した.ある大学の履修登録科目を用いた調査によって,7千名の学生数が11の連結成分に分かれること,もっとも学生数の多い連結成分に学生の95%が含まれること,ある日の朝に情報発信を始めた場合にその日の夕方までに1,800名程度(中央値)に情報が伝わることなどを明らかにした.3) また,マルチポイントリレー(multipoint relay)の選択方法の改良方法についても明らかにした.
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