研究課題/領域番号 |
26330114
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高汐 一紀 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (40272752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 論理的身体感覚 / マルチモーダル知覚センシング / 知覚共有ネットワーク / ソーシャブルロボット / ユビキタスコンピューティング |
研究実績の概要 |
研究計画第2年度となる平成27年度は,昨年度までの基礎的な議論を踏まえ,各研究課題に関しての手法の精緻化と,遠隔コグニティブ・システムとしての有用性を実証的に検証するフェーズと位置付け,以下の3つの課題を協調,並行して進めた. 【知覚ポッドのハードウェア仕様の再検討と知覚アルゴリズムの精緻化】 前年度での問題を一般化し,「知覚ポッド(ロボット)とユーザが多対多で接続可能なトポロジ」を対象とした場合の,高機能小型ノードの機能要件をハードウェアとソフトウェアの両面から整理し,皮膚感覚情報や運動感覚(自己受容感覚)のセンシングならびに知覚コンテクストへの加工(知覚処理)までをリアルタイムに実行可能な知覚アルゴリズムを設計した. 【知覚共有ネットワークの遠隔コグニティブ・システムとしての評価】 生体神経網をモデルにネットワーク上での知覚処理アルゴリズムの見直しを進め,システム・アーキテクチャとして実装,その有用性と基本性能を検証した. 【知覚ディスプレイの提案と装着型遠隔コグニティブ・システムの検討】 安価に構築可能な非侵襲型のポータブル感覚ディスプレイ装置のプロトタイプを実装し,提案知覚共有ネットワーク・アーキテクチャと併せた,次世代の装着型遠隔コグニティブ・システムの検討を行った. 併せて,昨年度に続き,フィージビリティ・スタディとして,「参加型実世界情報プロービング技術」,「大規模分散型知覚ネットワーク構成技術」,「高感度コグニティブ・システム構築技術」の3点に関して,欧州プロジェクト,米国プロジェクトに関連する諸機関を調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画がその実現を目指す「知覚共有ネットワーク(Perceptive Network)」とは,生体の知覚機能を模倣可能な小型ロボットである知覚ポッド(Perception Pod)と,非侵襲型のポータブル感覚ディスプレイ装置である知覚ディスプレイ(Perception Display)とがアドホックに接続された,遠隔コグニティブ・システムである.知覚ポッドからなるネットワークのトポロジは生体の神経網を模した構造をとり,最終的には人間の知覚能力の空間的拡張,すなわち,物理的な身体構造や物理空間に制約されない論理的な身体感覚の形成を可能とするものである. 本研究計画は,「プラットフォーム実装」と「知覚処理アルゴリズムと応用アプリケーション実装」を主な軸として立案されている. プラットフォーム実装に関しては,申請者がミュンヘン工科大学にて研究開発に従事していたマルチモーダル感覚センサ・パッド(テキスタイル装着型センサ)をベースに,昨年度に実装した知覚共有ネットワークのプロトタイプを一般化し,基礎評価を終え,最終年度の遠隔コグニティブ・システムとしての有用性評価実験に向けた準備と,論文の執筆を進めている. 知覚処理アルゴリズムと応用アプリケーション実装に関しても,国内に留まらず国外に対しても理想的な形での情報発信をすることができ,高い評価を受けることができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度となる平成28年度は,これまでの基礎的な議論を踏まえ,各研究課題に関しての手法と,遠隔コグニティブ・システムとしての有用性を実証的に検証するフェーズと位置付ける. 【ハードウェア仕様の確定と知覚アルゴリズムの実用化】 今年度,実運用環境を想定し再設計を行ったハードウェア仕様と知覚アルゴリズムを実用化することを目標とする.具体的には,基本ハードウェア・アーキテクチャをミュンヘン工科大学にてリリースが予定されている新しいマルチモーダル感覚センサ・パッドへ移行するとともに,分散する知覚ポッドの知覚能力を多人数で共有する状況を想定し,ユーザ毎のルールに基づいて知覚機能をダイナミックに再構成できるよう,知覚アルゴリズムの一般化をさらに進める. 【知覚共有ネットワーク型遠隔コグニティブ・システムの評価】 生体神経網をモデルに,ネットワーク上での知覚処理アルゴリズムの見直しを進め,システム・アーキテクチャとして完成し,その有用性を実証的に検証することを目標とする.より一般化された問題下にあっても,知覚ポッドの適切な選択,感覚情報の伝達と知覚機能を効率的に提供可能なシステム・アーキテクチャを完成させ,本研究課題で検討した方式を統合的に評価,検証する. 【装着型遠隔コグニティブ・システムの検討】 安価に構築可能な非侵襲型のポータブル感覚ディスプレイ装置を提案,プロトタイプを実装し,知覚共有ネットワーク・アーキテクチャと併せた,次世代の装着型遠隔コグニティブ・システムの検討を行う. 各研究課題での成果は,随時,国内外の学会に論文として発表し,各分野の研究者から評価を仰ぐ.加えて,実証実験の成果等を慶應義塾大学SFC研究所設置の「ユビキタスコンピューティング&コミュニケーション・ラボ」を通して,社会に広く公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画の一部成果に関する論文発表時期の見直しに伴い,研究計画の軽微な変更を行った.平成28年3月を予定していた学会発表を変更し,同年8月及び10月の学会で実施することとしたため,出張費用として計上していた研究費を次年度に使用する.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,物品費500,000円,旅費400,000円,その他100,000円を計上している.次年度使用額の125,554円は旅費の一部として,国内学会発表1件分の出張旅費として使用することとする.
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