研究課題/領域番号 |
26330116
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
水野 修 工学院大学, 工学部, 教授 (80508846)
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研究分担者 |
新津 善弘 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (00365553)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アドホックネットワーク / DTN / コンテキストアウェアネス / プレゼンス / 電子白杖 |
研究実績の概要 |
災害発生直後の通信品質が不安定な環境下において,社会的弱者に対し的確な避難誘導や避難所での補助を実現するために,センサを具備した白杖からのコンテキストと呼ばれる状況の把握・誘導方式,アドホックネットワークによるコンテキストの伝送・収集方式,並びに情報提供のためのコンテキスト判断・提供方式を明確にし,それらを組み合わせた減災情報提供システムの構築法を確立することを目的とする.今年度は,当初計画に基づき,(1)状況の把握と誘導(2)状況の伝達と収集,(3)状況の判断と情報提供についてそれぞれ基本方式の検討を実施した. (1)状況の把握と誘導については,これまで段差については,正面方向のみが対象であったが,推定アルゴリズムを改善することにより,今回側方にある段差も検知可能となった.また,被災時の限定された通信環境の下で有効な誘導を実現するための誘導方式の検討を行った.道路形状を考慮すると,方向転換箇所が限定されるため,通信回数を軽減できることをシミュレーションにより明らかにした. (2)状況の伝達と収集については,端末が密集した状況と疎な状況が混在することを考慮し,MANET(Mobile Adhoc NETwork)とDTN(Delay Tolerant Network)を切換えるデュアルモードネットワーク方式を提案した.MANET,DTNのみに比べ,シミュレーションによりで情報伝達速度と端末の消費電力の点で優位であることを示した. (3)状況の判断と情報提供については,さまざまなコンテキスト事案を勘案し,被災状況や情報提供対象の状況を推定する方式を検討し,実装のための設計に着手した. これらの成果について,今年度は,国際会議1件,国内研究会10件発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すように,当初設定した課題(「」で示す)に対して,目的達成に向けた成果が明らかになりつつあり,概ね順調に進展していると判断できる. (1)状況の把握と誘導:当初課題の「高低差があるモデルについて検出誤差を評価」に対して,側方にある段差も検知可能となったことにより,検出できる範囲が拡大した.これにより,人や物をよける際に方向感覚を失って斜め方向に進行してホーム転落事故の発生するケースを抑止する効果が期待される.誘導については,指示回数を限定できることが明らかになったことで,「ネットワークを通じた指示を行うにあたりアーキテキチャの再構築」に対する基本データとなった.. (2)状況の伝達と収集:限られたユースケース下ではあるが,提案したデュアルモードネットワーク方式が,「密度分布に偏りのある状況下で.ホップ数を抑え伝送距離を延ばす経路選択法」と「MANETとDTN方式と融合したデータ伝送を設計し,データの転送率などを定量的に求める」ことに対する有効な解である.シミュレーションによって情報伝達速度と端末の消費電力の点で優位であることを示した. (3)状況の判断と情報提供:さまざまなコンテキスト事案を勘案した「コンテキストの推定方式」を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ,それぞれの課題以下の方針で検討を進める. (1)状況の把握と誘導:これまで検討した方式について,視覚障がい者の方に使用して頂き意見をフィードバックさせると共に,一般の高齢者でも視力が低下している場合が多いため,この場合の支援可能となるように発展させる.また,今までの障害物、危険箇所の検知だけでなく,今後は視覚障がい者にとって,真に必要な情報のみを限定して通知する情報通知方式と通常時でも災害時でも安全,安心な目的地への到達を支援する誘導方式を検討する. (2)状況の伝達と収集:現状では限定されたユースケースでのみを想定しているため,双方向で情報をやり取りする汎用的なユースケースでも適用できるように方式の改善を図る.また,基幹網が部分的に使用できる場合も想定できるので,基幹網の状況を勘案した情報伝送・収集方式の検討を行う. (3)状況の判断と情報提供:コンテキストの推定方式およびコンテキストを活用した情報提供方式については,プラットフォーム化して実装することで,障がい者だけではなく,より汎用的な対象者についても適用できるようにする.また,コンテキストの追加や変更に柔軟に適応するための検討を行う. これらの研究成果については,内外の学会にて報告するとともに,類似テーマの研究者との議論で得られた知見は適宜検討に取り入れる.
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次年度使用額が生じた理由 |
第4四半期の学会に対する国内旅費支出に対し,予想よりも経済的な支出が可能が可能であったため,若干の黒字が生じた.科研費を有効に活用するため,不要不急なものへの消費ではなく,次年度への使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度請求分の助成金と合わせ,成果発表のための旅費および学会参加費に充当する.
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