通信品質が不安定な環境下において,社会的弱者に対し的確な避難誘導や避難所での補助を実現するために,センサを具備した白杖からのコンテキストと呼ばれる状況の把握・誘導方式,アドホックネットワークによるコンテキストの伝送収集方式並びに情報提供のためのコンテキスト判断・提供方式を明確にし,それらを組み合わせた減災情報提供システム構築法の確立を目的としている.今年度は,昨年度の検討を発展させ,(1)状況の把握と誘導,(2)状況の伝達と収集,(3)状況の判断と情報提供について,技術基盤確立を目指した. (1)については,昨年度の検討結果を発展し,歩きスマホのユーザに対して、視覚障がい者からビーコンを送出することにより,早期の接近通知を実現する方式を提案し、試作システムにより効果を確認した.また,NIRS(Near-InfraRed Spectroscopy)測定装置を用いて取得できる脳内ヘモグロビンの濃度を活用し,様々な状況でのユーザの心的状態をユーザコンテキストとして推定可能であることを実験により確認した. (2)については, ICN(Information Centric Network)技術を応用したデータ伝送方式について,経路構築法およびデータ法を検討し,ネットワークの負荷を均一化する経路切り替え方式の効果をシミュレーションにより確認した,また,これまでの検討結果を踏まえ, MANET(Mobile Adhoc NETwork)とDTN(Delay Tolerant Network)のハイブリッドノード,およびICNノードを実装し,実験により動作確認を行った. (3)については,災害時の状況や利用者の状況に呼応して行動ルールを提供するシステムについて,前年度指摘された点について改善を図った. これらの成果について,今年度は学術論文1報,国内学会12件,国際会議1件の発表を行った.
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