研究課題/領域番号 |
26330117
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
長谷川 幹雄 東京理科大学, 工学部, 教授 (50358967)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CDMA / カオス / 最適化 / Multi-Armed Badit問題 / 無線通信 / コグニティブ無線 |
研究実績の概要 |
高速無線通信の普及により無線周波数資源が逼迫し、さらなる大容量化が困難となっている。そこで、無線周波数の利用効率を改善するコグニティブ無線技術が注目を集めている。本研究では、コグニティブ無線におけるチャネルや経路の最適選択問題を効率的に解くためにカオス理論に基づく複雑性を応用する新しい方式を確立することを目指している。 平成27年度は、コグニティブ無線におけるチャネル選択問題を、Multi-Armed Bandit問題として定義し、最適化するアルゴリズムを構築した。多くのチャネルがランダムにアクセスされるISM帯においては、どの周波数にどれだけのトラフィックがかかるかを管理できない。本研究では、ISM帯の利用効率改善をMulti-Armd Bandit問題として定式化した。Multi-Armed Bandit問題は、未知の確率を推定しながら、最大の利益を得る問題である。まず、Multi-Armed Bandit問題に有効なToWアルゴリズムを無線LANに応用可能な手法に拡張した。さらに、提案手法の性能を検証するために、本アルゴリズムを無線LAN基地局に実装し、実機を用いた実環境での実験によって有効性を示した。本提案システムについては、現在の無線LANに適用可能であり、実用性が高いため、この提案手法について特許出願も行った。 アルゴリズムの改善も進めており、Multi-Armed Bandit問題において最も有効なアルゴリズムに、カオス理論に基づく低相互相関な揺らぎを適用し、その性能をさらに改善できることを示した。この成果についても、今後、学会や論文で発表する予定にしている。 カオスによる低相互相関な揺らぎは、これまでCDMAに適用されており、その有効性についての検討を進めた。さらに、このような揺らぎは、パケット通信における衝突回避にも有効であることを示した。 以上の成果は特許出願しただけでなく、学会や論文で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、カオスダイナミクスを用いた最適化の無線応用に関する研究を進めることとしており、様々な最適化アルゴリズムや学習アルゴリズムの性能を向上することを目的としていた。短期的な目的よりも長期的な理論研究を中心に進めることを想定していた。 コグニティブ無線への応用が可能とされていたMulti-Armed Baditアルゴリズムにもカオスダイナミクスの適用を試み、性能の改善に成功した。この研究の中で、無線LANへの適用も可能であることがわかり、具体的な手法設計と実装評価を行い、有効性を確認した。本成果は実用性も高く、特許出願にまで至った。この成果は当初の計画以上である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、DS/CDMAの研究において示された相互相関関数を最小にするカオス信号を、様々なシステムの性能改善に応用することを目指している。低相互相関は様々なシステムやアルゴリズムにおいて有効と考えられ、昨年度までの研究において、無線LANプロトコルや最適化問題などにおいても有効であることを示してきた。 今年度は、これまでの結果をもとに、さらに様々なシステムへの応用を進めていく。Multi-Armed Baditアルゴリズムについては、まず理論研究を進め、有効性を確立する。本研究成果は論文としてまとめていく。さらに応用研究についても、無線LAN以外の応用も検討し、現在のシステムの改良、および新しいシステムの考案を並行して進めていく。パケット通信におけるMACプロトコルの研究も進め、昨年度までに確認できた有効性を確立していく。理論部分を固めながら、シミュレーションによって様々な状況における性能改善を確認していく。適用対象を広げ、様々なシステムへの応用を検討していく。また最終年度であるので、論文発表、学会発表を積極的に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の残額が29341円となったが、この額では物品を購入することが困難であったため 、次年度使用額とすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は最終年度であり、これまでの成果を積極的に発表し、かつ、これまでの成果を立証するための実験に使用していく。
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