研究実績の概要 |
前年度において,本研究課題を遂行するために必要となる大規模多次元データセットのエンコード方式を実装した基盤システムを構築した.また,このシステム上で,大規模木グラフを実現し,検索するプロトタイプシステムを当初の予定どおり設計・構築した。しかし,木グラフ分割は静的分割にとどまっており,記憶負荷の動的変動に対する対策は今年度の課題としていた.この課題に対して,次の前提条件で取り組み,以下の(i)(ii)の成果を得た. (前提条件)対象とする木グラフTの辺にはラベルが付され,同じ親ノードから出る子ノードへの辺のラベルは重複していてもよい.Tは次の2つの木グラフに分離される:(a)Tから辺のラベルを捨象した構造木T1, (b) 辺のラベルの連接である経路式の一意性を保証した経路木T2.また,使用環境(例えば,物理スレッドの最大数)に見合う分割数kをあらかじめ設定し,構造木T1をk個の部分木とS1,S2,...,Skとこれら以外で構成されるT1のルートを含む部分木S0のk+1個の部分木に分割する.S0は部分木S1,S2,...,Skへの索引として機能する. (i)S1,S2,...,Skの各部分木のルートノードのTにおける高さレベルを可変とした場合,各部分木の任意のノードについて,そのTにおける位置を指定する経歴パターンをT1部分と当該部分木部分の2つに記憶コストと検索コストのオーバヘッドを抑制して分割する方式を提案して,実装した. (ii) (i)の方式により記憶コストのバランスを考慮して初期分割した部分木群をシステムの運用につれて発生する記憶量負荷のアンバランスを検知して部分木群を動的に再構成するアルゴリズムを考案した. 以上のシステムに関する研究発表を本年3月に開催された情報処理学会第120回「情報基礎とアクセス技術研究会」において発表した.
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