地図の縮尺を小さくすると,道路や建物などの地物が密集して小さくなり,読みにくくなる.総描は,大縮尺の地図データから,地図を簡単化,抽象化して,読みやすい小縮尺の地図を作成する技術である.従来,道路や建物の形状の簡単化や集約などの幾何学的な変形により,読みやすい地図を生成する総描手法が多数開発されている.しかし,現状では,どのような地図データからでも要求された縮尺の地図を実時間で作成できる実用的な技術は存在しない.このため,多くのWebマップでは,事前に準備した縮尺の地図画像に位置コンテンツを重ねて表示する.この結果,携帯端末のような小さな画面に表示する場合や,位置コンテンツが大量にある場合などに,視認性が著しく低下することがある. このような問題を解決するため,本研究では,地図データと位置コンテンツを深く結びつけた解析に基づき,視認性と一覧性に優れた対話型可変スケールマップを生成する技術を確立する. 本年度は,以下の項目を中心に研究を推進した.(1)交通機関のアクセスポイントを考慮してFocusの形状と縮尺,及び,Contextの縮尺を定めることにより視認性と一覧性を向上させたFocus+Glue+Contextマップを実現した.(2)複数の基準長以上のストロークからなるネットワーク(ストロークネットワーク(SN))を有するデータベース(SNDB)を構築した.基準長の異なる複数のSNを合成して多層ストロークネットワーク(MSN)を構築するシステムを実現した.(3)MSN上で幅優先探索により,ストローク数最少の中で最短の経路を求める手法(SPMS法)を実現し,SPMS法を用いてMSNと従来の道路ネットワークとの比較評価実験を実施して,MSNにより探索時間を大幅に短縮できることを示した.
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