本研究は,ソーシャルメディアサイト上で投稿される画像データをソーシャル画像データと呼び,ソーシャル画像データを用いた動向情報の時空間分析を可能とするための新しい時空間データマイニング技術の確立を目的とする.動向情報の時空間分析を行う場合,「何が,いつどこで発生し,どのように変化しているか」を分析可能にするための基盤技術が不可欠である.具体的には研究期間内に,(A)ソーシャル画像データの時空間データモデル化,(B)内容ベースの時空間クラスタリング手法,(C)時空間バースト検出手法,(D)大規模ソーシャル画像データの効率的な管理法とその並列処理,(E)時空間上における動向情報の可視化,の五つの研究課題に取り組む.平成28年度は,H26年度とH27年度の成果をふまえ,(E)時空間上における動向情報の可視化に取り組んだ.動向情報の可視化については,時空間的な変化をする動向情報を画像データを含めて可視化する効率的な方法とユーザインタフェースの検討を行い,気象災害に関する動向を分析するアプリケーションを具体的な例としてプロトタイプを作成し,総合評価と手法の改良を行った.くわえて,ジオソーシャル画像データの分析手法として,深層学習も検討し,手法の改良を行った.具体的には,気象災害時に投稿された画像データを識別するために転移学習を用いた新しい分類器を作成し,気象災害を伝える画像データを高精度で抽出できることを確認できた.全体として,研究期間を通して,ソーシャル画像データを用いた動向情報の時空間分析を可能とするための時空間データマイニングの基盤技術を確立することができた.
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