研究実績の概要 |
本年度は,メモリ共有型マルチプロセッシング(SMP)環境において,昨年度作成した評価用ウェブ・アプリケーションFEHA (Front-end Environment for Hands-on Activities)のマルチコア対応および,大規模利用時の負荷測定実験を行った. FEHAは,簡易なプログラミング演習環境を提供するウェブ・アプリケーションである.大学の講義に適用することで,多数の利用者による性能測定実験を行うことができる.単純な性能測定実験は,ベンチマークプログラムなどでも可能であるが,通信リクエストの発生傾向が実運用と乖離する傾向にあるため,多数の利用者による実運用に近い測定実験は必要である.FEHAは,近年のウェブ・アプリケーション開発で注目されているMEAN(MongoDB, Express, AngularJS, Node.js)スタックと呼ばれる基盤を用いて実装した.この基盤上に実装されたウェブ・アプリケーションは,既存のデファクト・スタンダードであるLAMP (Linux, Apach, MySQL, PHP)スタック上に実装されたものと異なり,単一プロセスによるイベントループ処理により,高負荷時に多数のHTTPリクエストを効率よく処理できるという特徴を持つ. 本年度行ったマルチコア対応においては,複数のプロセスを同時に起動し,各コアに割当てることで,SMP環境上でより高効率な処理を実現した. 昨年度行った単一プロセスによる性能測定実験では,FEHAを大学の講義に適用し,ノートPC程度の性能をもつサーバを用いて,100名を超える学生による性能測定実験を行った.その結果,負荷がサーバの処理能力を超え,正確な性能を測定することができなかった.一方,今年度行ったマルチコア対応により,1時間30分間に,最大で116名の学生が行った少なくとも1,648回のHTTPリクエストを滞り無く処理することができた.
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