研究課題/領域番号 |
26330144
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
村尾 裕一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60174265)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国剰余定理 / 陰関数描画 / GPGPU / WebGL / 最短経路探索 |
研究実績の概要 |
本研究は、整数計算を任意精度で正確かつ高速に行うことを主目的とし、代数的・記号計算や非数値的な処理においてデータ並列処理を実践する手法を開拓する。今年度前半までは準備として、研究題材の算法とその骨格の精査、適切なデータ表現法の検討、動作確認のための実験的な実装を進めてきた。RNS表現の整数を扱う場合、符号判定に浮動小数点数を用いる方法では必要精度と実行性能間の調整が必要で、また乗算では精度拡張のための基数変換とリスト処理が必要である等、様々な要素を考慮する必要がある。分割統治によるGCD計算では、陽に多倍長数を扱わない方法を構築して処理の簡単化を図り実装実験を進めた。 またGPUやSIMD命令の活用も目指して、今後使用予定のプロセッサ等に関する情報を収集し利用可能性の検討を進めた。ARMプロセッサの開発環境について、32bit版Androidに対する標準的な方法の構築は前年度完了し、今年度は 64bit版の実験環境の整備と、タグ付きポインタを利用した計算手法の性能評価とその実験法の検討を進めた。 陰関数描画については、3変数の場合の研究を進め、従来の実験結果を論文として発表し、未解決の部分についても数理的な探究の結果ほぼ解決することができた。2変数の場合のGPU並列処理では、従来の実験に加え、ブラウザ上でJavaScriptとWebGLによるGPGPUの方法が有効であることを見出し、具体的な方法の検討と実験を開始した。 以上は連携研究者らと共同で進めているが、他に、任意多倍長整数が必要な計算において浮動小数点数による表現を用いた計算法の進展や、正確な行列式計算に対する計算法の実験と分析が連携研究者らにより進められた。 また、関連分野の著名な国際会議に参加し、数式処理に関連した話題として最短経路探索にGPU並列処理を用いる方法を発表し、併せて関連研究の最新情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソフトウェアの開発と実験のために、32bit/64bitのOS、任意多倍長の整数を多様な表現法で扱うためのリスト操作と任意多倍長の整数を対話的に扱うための計算環境、それらをハードウェアによる内部表現に直結した計算を行うための計算環境等、様々なソフトウェア環境が必要である。 そのような環境の整備を、まとまった時間をとることが可能な休暇期間中に実施する予定でいたが、日常的に利用していたノートPCの不調・破損、体調不良と治療および健康への不安といった不測の事態が重なり、十分に実施することができなかった。 他方で、WebGLによるGPGPUのように、本研究課題では予定はしていなかったが高い関連性と有効性が見込むまれる話題が見出され、新たな進展の可能性の検討に時間を割いた。
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今後の研究の推進方策 |
達成度の遅れは、実験的なソフトウェアの開発と実験では不可避なため、ある程度は見込んでいたが、不測の事態の結果、時間不足は決定的となっている。 ソフトウェアの開発と実験においては、実用性を高めるには多様な条件を想定して開発と実験を進めるのが一般的だが、今後は時間を有効利用するために、開発と実験は有効性を示し易い方面に重点をおいて進めていき、同時に、JavaScript や WebGLの利用等、将来の進展が見込める新たな方面の検討を机上で進めていくこととする。 昨年度滞っていた 64bitARMプロセッサを利用した(タグ付きポインタの実験のための)実験環境については、無事整備することができたため、適切な実験方法の検討と計算機実験を進める。 陰関数描画のアルゴリズムについては、3次元の未解決の部分についても解決の見通しが立ってきており、従来の実験内容について今年度まとめた論文をもとに、共同研究者らと共にアルゴリズムの検討と開発を進めていく。 上記以外については,当初の計画どおり,研究・開発・実験を目富める方向で進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度および本年度と、本務である授業等の実施との日程調整や健康上の不測の事態からくる不安から、予定していた海外渡航を減らしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
適宜、次年度以降の、国際会議の参加のための旅費や、進展著しい最新機器の購入に充てる。
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