研究実績の概要 |
本研究の目的は、整数計算を任意精度で正確かつ高速に行い、数式処理の計算や非数値的な処理において効率的・効果的なデータ並列処理を実践するための計算手法を開拓することである。具体的には、陰関数の正確描画をはじめとした典型的な問題例において、SIMD命令等の今日のCPUに共通するデータ並列処理の手法を活用するための適切な方法やアルゴリズムを選択し、更に大規模なソフトウェアライブラリとして一元的に記述する方法を検討することが当初の計画だったが、検討を進めるに従い GPU, SoCはおろか汎用CPUでさえアーキテクチャが予想外に発展し多様化していることが明らかとなり、その準数値処理分野での活用可能性と有効性の検証に重点を置くこととした。併せて、OpenCL、WebGL等のアーキテクチャに特化していない言語の記述性と効率の検証も行った。 本年度は、上記の方針の修正に加え、簡単な実験に基づく様々な検討を進め、従来の成果を総括することと同時に将来の発展が見込まれる部分に重点を置いて研究を進めた。その成果としては、WebGLによるGPGPUやOpenCLによる並列処理の記述の統合化、陰関数の正確描画法(=多変数多項式の零点の探索)及び関連アルゴリズム、ビット演算に特化した線形方程式の解法のGPU処理の性能評価、等が主なものである。WebGLについては、中国剰余定理の利用等、整数演算での有効性が確認できたが、浮動小数については多くのプラットフォーム上で精度不足となることが明らかとなり、精度拡張等を用いることが今後の課題である。OpenCLの利用は線形方程式の例を通し、記述はターゲット独立にできるが、演算処理はターゲット依存とせざるを得ないという知見をえた。陰関数描画については単純化した新たな計算法を提案し、必要となる計算部品と実装法の研究が今後の課題となった。
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