研究課題/領域番号 |
26330152
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
富岡 洋一 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (10574072)
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研究分担者 |
北澤 仁志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60345329)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カメラ識別 / スキャナ識別 / 精度評価手法 / 経年変化 / クラスタペア |
研究実績の概要 |
本研究課題では撮像素子の感度の違いから生じるノイズであるPhoto Response Non-Uniformity Noise (PRNU)ノイズをカメラの指紋として利用することで,画像,動画像を撮影した機器をを特定する手法を確立することを目的としている.平成27年度は提案のクラスタペアに基づくカメラ識別手法の精度検証手法の確立,及びスキャナ識別における経年変化が及ぼす識別精度への影響の調査に取り組んだ. 提案のクラスタペアを用いたカメラ識別手法は,撮影カメラのクラスタペア間のPRNUノイズ値の大小関係が,撮影画像中においても保たれることを利用して,撮影に使用した機器を特定する.この手法は,実験的に高い識別性能を有していることが確認されているが,一方で理論的にどの程度の識別性能を有しているかという評価が不十分であった.本研究では,クラスタペアの作成手法を改良したことで,1枚の画像からクラスタペアのノイズ値の差分を正規分布でモデル化することを可能とし,このモデルにより推定される識別精度と実験結果が良く一致していることを確認できた. また,撮影時期の異なるデータを収集し,スキャナの経年変化の影響について調査した.この結果,スキャナのPRNUノイズを推定するのに使用したスキャン画像がテスト画像の撮影日から離れるほど識別力が低下する傾向が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの目標であった,カメラ,スキャナの識別に適用可能な識別技術と精度検証手法を確立できており,研究はおおむね順調に進展していると考えている.一方で,本年度の研究成果から,実用化のためにはさらに精度を向上する必要があることも判明したため,今後は信頼性向上のために,精度向上に取り組んでいく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の結果から,ディジタル画像の撮影機器識別の実用化のためには更に識別精度を向上する必要があることが判明した.撮影機器の信頼性の高い識別手法は平成28年度に取り組む予定であったPRNUノイズのコピー攻撃への対策に必要不可欠な技術である.このため,平成28年度では撮影機器の更なる精度向上に重点的に取り組むこととした.現状ではクラスタペアのノイズ値の大小関係を用いることで識別を行っているが,この手法に加えて,PRNUに起因するノイズの模様や,カラーフィルタのパターンに基づくノイズを用いた識別を組み合わせることでカメラ,ビデオカメラ,スキャナ全体の識別精度を向上することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度から平成28年度5月まで実施するPRNUノイズの模様を利用したカメラ識別に関して11月発表の国際会議で発表を計画しており,また,昨年度の研究成果であるカメラ識別の精度評価手法については論文誌への投稿準備中である.このため,国際会議の渡航費と論文掲載料して研究費を繰り越す必要があった.また平成27年度の結果からカメラ識別手法の精度向上が必要であることが判明したため,カメラ識別の精度向上のためにより計算が複雑な識別手法も試す必要がある.このため,平成28年度6月までの結果を踏まえて,シミュレーションの効率化のために適切な仕様のワークステーションを購入することを計画している.
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議への渡航費,論文誌の掲載料,シミュレーション効率化のためのワークステーション購入費に使用する.
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