本研究では,代表者が考案したブルームフィルタを用いた検索可能暗号をさらに発展させ,より柔軟で効率的な手法を開発してきた。平成28年度は,平成26,27年度に開発した手法を改良し,下記の成果を得た。 ・キーワード型ブルームフィルタを用いた検索可能暗号:代表者が考案した従来法では,ドキュメントを基盤としたブルームフィルタを用いて検索システムが構築されている。本研究はこれを発展させ,平成27年度に,キーワードをベースとした新たな検索可能暗号を提案した。しかし,これは非適応的安全で,安全性が弱い。そのため,平成28年度は,適応的安全性を満たす安全性の高い手法を開発した。提案法は,従来法よりも単純なデータ構造を用いて暗号化索引を実現しており,暗号化索引のサイズ,検索時間において効率がよくなっている。提案法については,理論的に安全性を証明しただけでなく,実験的にもその性能を評価した。 ・部分文字列検索可能な検索可能暗号:従来法の多くは,文書からキーワードを抜き出し,それと完全一致する文字列しか探せない。キーワードの部分文字列まで検索できると,検索の幅が広がるため,接尾辞木,位置ヒープ木など通常の文字列検索で使われているデータ構造を用いた手法が提案されている。本研究では,暗号化文字列に対し,DAWG(Directed Acyclic Word Graph)を用いることにより,部分文字列まで検索可能な新たな手法を提案した。文字列に対するDAWGとは,その文字列のすべての部分文字列を受理するコンパクトな決定性有限オートマトンである。提案法は,DAWGに加え,DAWGと密接に関係のある部分集合木と呼ばれる構造を利用することにより,さらに暗号化索引のサイズを縮小できる。 ・ブーリアン検索可能な検索可能暗号:提案した手法について,より詳細にその性能を評価した。
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